中編・短編
□真実がいつも一つだとは限らない
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鈴木財閥の御令嬢鈴木園子。お金持ちの娘らしからぬ性格は友達想いでちょっとミーハー、お調子者の空気を読め無さは重い雰囲気を一瞬で払拭してしまえる素晴らしいキャラクターで、まんま女子高生！を体現している彼女は私のお気に入りだった。そう、お気に入りだったのだが。
「なりたいなんておもってない…」
毎朝鏡の前で溜息をつき、この夢はいつ覚めるんだろうかと悶々考える。私は普通の女子大生だったのに、ある朝目覚めると鈴木園子になっていた！！とかなんていじめだ。いや、生活とかは凄いリッチになりましたけどね。小さい蘭ちゃんも新一くんも構い倒したいくらい凄く可愛いけどね。
「わたしはモブでよかったのにぃぃいいいい」
寧ろモブが良かったモブ万歳。蘭ちゃんと新一くんの夫婦漫才を茶化す可愛い園子ちゃんを観察してあわよくば彼女とお友達になりたかった。メイン二人に絡むと何に巻き込まれるか分らないし、私園子だいすきだから…。中身私とか、嬉しくないから…。
「園子ー？時間大丈夫ー？」
「やっば…！よーし今日もカチューシャ装着して園子になる時が来た…………ハーイ姉貴！すぐ降りるー！！」
天真爛漫というほど無邪気じゃないかもだけどさ、園子ちゃんの可愛さって計算してない素顔にあると思うんだよ。それを演じるには自分を騙さないといけない訳で、それはやっぱり園子ちゃんとは違うんだろうけど、私はこの身体(？)を園子ちゃんに返す日まで、ちゃんと園子ちゃんでいないといけないと思ってね、対策として、カチューシャを装着したら園子ちゃんの性格になる！！っていう強い自己暗示をかけました。うん、おかげで目が覚めた幼稚園時代から今まで、取りあえず自分で満足な鈴木園子を演じられてると思いますまる。
「おっはよーらーん！！今日も相変わらず旦那と登校してラブラブだねー！」
「もー毎朝しつこいよ園子。ただの幼馴染だって言ってるじゃん」
「にっしっし、いつ変わるのか分からないのが幼馴染でしょ！！」
小学生時代は財閥令嬢だけあって車での送り迎えが当たり前だったけど、中学に上がってから普通に歩いて登校できるようになった。もしかしたらSPの一人や二人後ろで見守っててくれてるかもしれないけどどうせ分からないことなので今日も私は新一くんと蘭ちゃんをからかうことに専念しておりますともええ。
「相変わらずお前もしつけーな園子」
「うわー夫婦で何同じリアクションかましてんのよ。っていうか私は蘭に話しかけただけであって新一くんは別にお呼びでないから」
シッシ、と動作をつけて彼を追い払えば、苦笑した蘭ちゃんがこちらまで来てくれる。たまに蘭ちゃんを迎えに行って三人で登校する時もあるんだけど、新一くんがお前は邪魔だと言わんばかりに私と蘭ちゃんの間に立ってめっちゃ話しかけてくるから勝手に傷心中なんだよね。私貴方の未来の奥さんの大親友なんですけどって言う。
「園子さ、自分も新一の幼馴染に入るって考えたことないの？」
「はー？幼馴染って、小さい頃から家を行き来してお互いの両親がそれなり以上の仲でないと成立しない魔法のジャンルよ？どっこが私と新一くんに当てはまるのよ」
「そ、そう…」
若しくは家が隣同士とかね！ベランダ越しに愛を囁き合うんでしょやだ素敵！わりと私もそういうシチュには夢見ていた口なのでいくらでも言葉は出ますとも。
「あーあ、私もどっかに素敵な王子様落ちてないかなー」
「王子様って落ちてるものだっけ……こないだ格好良いって言ってた野球部のエースはどうしたの？」
「やー、話しかけて友達にはなったんだけどね、どうにもマネージャーの子がホの字だったから退散したわ。人の畑は荒らしちゃいけないようん」
「オメーは猪かっての」
ボソッと呟いてでも会話に入りたいらしい新一くんはいつものようにスルーして、園子ちゃんの王子様を頭に描く。京極さんが出てくるのって高二になってからなんだよね。それまでに園子ちゃん戻って来てないかなあ…。私が彼と恋愛できるかって聞かれたら、また別問題になりそうな気がして胃が痛い。
「園子？」
ぼーっとしてたら蘭ちゃんが目の前でひらひらと手を振ってくれていた。友を心配する瞳は、この物語のヒロインらしく優しいもので、知らず口角が上がる。
「大丈夫？話聞いてた？」
「話は聞いてなかったけど蘭が可愛いから大丈夫！女の子見てれば今日も一日乗り切れるわー！！」
「園子、うちのお父さんみたい」
くすくす笑ってくれる蘭ちゃん超可愛い。オヤジくせぇとか言う新一くんとは大違い過ぎて本当勿体ない気もするくらい蘭ちゃんって親友として鼻が高い女の子なんだよ。でもまあ何だかんだでお似合いだしねこやつら。物語として組み込まれてる訳だし、相思相愛なら仕方ない。リア充末長く爆発しやがれ幸せにな！
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以降の頁とっても原作崩壊なので公式カプ以外の組み合わせはちょっと…って方用に今一度注意しておきます。