多重トリップ過去編


□閑話
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ハーマイオニーとの出会い(一年)


魔法使いの家系の出じゃない私は、ホグワーツ魔法魔術学校に来れるということを凄く楽しみにしていたわ。だから予習だって一生懸命やったし、家で呪文の練習もした。得た知識の中には魔法族の子も知らないものもあって、それが何だか誇らしくて披露したりもした。けれど同じ寮の子たちは向上心がないのか、私の話にはついてきてくれなくて、一人で空回っているような気がしていたの。そんな時よ、蛍に会ったのは。正確には、組み分けでレイブンクローに入るべきだったかもしれない、と少し後悔していた時で、優秀らしい彼女のことは結構目で追っていた……だけど彼女の周りには私と違っていつも人が居たから、なかなか話し掛けられなかったの。図書館の常連なのは一緒だから多分向こうも顔くらいは知っていてくれているんじゃないのかしら、と思ってはいるけれど、私の心臓は初めて受けた授業の時よりも緊張していたわ。

「きょ、今日は一人なのね」

だから私は、多分第一声を間違えた。静かに難しそうな本を、それこそ入学直後の一年生が読むことのないだろう本を吟味している彼女に震える声で投げかけた瞬間から、私はもう踵を返したくて仕方なくなったわ。だって挨拶も自己紹介もなしに上から目線にジロジロと言葉をかける人間の印象が良いわけがない。強張った無愛想な顔じゃ“いつもは人に囲まれているのに、愛想でも尽かされたの?”とかいう至極失礼な意味に捉えられてしまうかもしれなくて、予習は完璧でも、実践で躓いたら意味ないのに!と激しく自己嫌悪に陥っていた。被害妄想かもしれないけれど、とりあえず私がこんな風に話しかけられたら“大きなお世話、あなたには関係ないでしょ”って応えるわ。自分で言っていて涙が出て来るけど。彼女は案の定キョトンとした顔を私に向けてから、少し周りを見渡した。もしかしたら連れ合いが居たのかもしれないと更なる不安に襲われた頃、周辺確認が終わったらしい彼女は私の不安とは裏腹に優しく微笑みかけてくれた。

「私、面白い本だと直ぐ熱中しちゃうから、此処へ一緒に付いてきてくれる子には前もって“返事がなかったら先帰ってていいわよ”って言ってあるの」

穏やかな中にも悪戯な笑みを滲ませてくれたのは、多分私が緊張していたから。打ち解けてからこれは本当の話で、彼女は真に親しい友人以外の声にはどうしても興味が勝ってしまうらしい事実を聞いたのだけど、この時の私は蛍の言葉を私のための冗談だと受け取って、何か安心したのよね。カチコチに固まっていたのも忘れて思わず笑った私に、彼女は益々柔らかく笑って、完全に私の緊張を解いてくれた。

「魔法界の本って、とっても面白いわよね」
「──ええ! 私もそう思うわ! ……なかなか、理解はされないみたいだけど」
「興味がないとね。読書を勉強だと捉えていて、尚且つ勉強が嫌いな子だったら苦痛に考えても仕方ないと思うわ。勿体無いとは感じるけどね」
「ッそうよね!」

私は初めて理解者を得た気になって、凄く興奮した。涙目にだってなっていたかもしれない。だって勉強することは楽しいことで、知識が増えるのは喜ばしいことだもの。

「私、ここの授業がどれも楽しくて仕方がないの。色んなことが、面白くて」
「分かるわ」

彼女はせき立てられるように話す私にも優しい顔のままで頭を撫でてくれて、初めて私の言葉に嫌な顔もせず肯定してくれた人に会えた喜びも手伝ってとても嬉しくて、凄く幸せだった。だからすっかり、名前を告げていないということを失念していたの。

「蛍、もう直ぐ夕食だから迎えに来たよ」
「あ、キリク。ありがとう」
「放って置くと本に熱中し過ぎた蛍は食べないことがあるからね」

ひょっこりと顔を出した、彼女の隣でよく授業を受けている一方的に見知った男の子に驚いている間に、彼女は手を振って行ってしまいそうだったから、慌てて私は名前を告げた。目の前で名前を呼ばれている男の子のように、彼女に呼ばれたい。彼女を呼びたい。この出会いが、これっきりにならないようにと、必死で。

「わっ、私! ハーマイオニー・グレンジャー」

たどたどしくて可愛げの欠片もなかったそんな私の自己紹介に、蛍は足を止めて凄く優しい顔で、ふわりと笑ったの。

「蛍・日比野よ。またね、ハーマイオニー」

欲しかった言葉をくれた貴女が、ホグワーツで一番最初に出来た理解者であり友達であり、大好きなひとになったわ!



((嬉しい、蛍……私頑張ってあなたに話し掛けるわ))
(珍しいね、蛍は取り巻きになりたがってる子とは距離を置くのに)
(彼女はそういう子じゃないから。多分、というか絶対勉強大好き仲間よ)
(ふーん(……まあよく図書室で見かけるしそうなんだろうけど……最後のは滅茶苦茶蛍に心酔した目だったぞ))




***
ハーマイオニーの思いは最初大分憧れが入ってる。今もだけど、憧れの度合いはロン>>>>|越えられない壁|>>>>ハリー>>>>>>>ハーマイオニーくらい。仲良し面子(アルくん・キリク・ティナ・ロラン)よりは高めだけど姉を慕うようなものではなくなったという感じ。取り巻き連中に関しては、勉強出来て人気高い蛍の周りに居ればメリットあるかも思考をちょっとしてる子たちだけど、別に親しくなくても蛍は勉強教えてくれるしガードも出来るので落ち着けば減ってく。むしろ図書館では余程のことが無い限り蛍の邪魔をしないという暗黙の了解があって、勉強面で聞きたいことは女子→ティナ男子→キリクに行くというシステムがその内出来る。
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