多重トリップ過去編


□協力者の集い
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休み中もフクロウはひっきりなしに飛び回り、私は話せるのを良いことに返信用の手紙まで往復便で頼んでばかりだった。いざとなったら森のカラスくんにでも頼むし、今のところ困ってないのでフクロウを買う予定はない。そんなこんなだったけど、主に手紙の内容はセドリックとアルくんと時々キリクを除いて宿題のこととか勉強のことばかりだったから、ついつい私も手紙が長くなってしまった。レイブンクロー生の宿命というか、もう性分なので仕方ないと思う。ティナも新しく加わる選択科目の予習を始めたらしく、隣で教えた方が如何に楽かということを思い知った。というわけで、久しぶりに顔を見て教えられるホグワーツ特急の日である。まあ毎度の事ながら定位置に一人腰掛け、読書に耽りながらアルくんが来るのを待っていたんだけど、コンパートメントの扉を開いたのはアルくんじゃなかった。

「久しぶり、蛍」
「……セドリック?」
「アルが教えてくれてね、譲って貰った」

わざわざ隣に座りながら、セドリックは面白そうに続ける。

「アルは嫌そうだったけどね。ティナとキリクがそうしてくれて。ロランはハッフルパフの友達に押し付けるからって了承取ってた」

その姿が目に浮かんだので、私もつられて微笑んだ。

「アルの方が良かったかい?」
「ううん、嬉しいわ、セドリック」
「あ、簪つけてくれてるんだね」

セドリックが休暇中に泊まりに来てくれた時に渡して貰ったプレゼントは、あれからずっと私の髪についていた。気付いてくれた彼に頷いて、本当に嬉しかったからぎゅっと抱き付いて再度お礼を言った。セドリックも笑顔で迎えてくれるので、飛び込むように彼の腕の中へ落ち着くことになる。再会のハグを十分堪能した後で、恋人のキスをねだられた。

「ちょ、ちょっと待って、セドリック」

去年もかけた目眩まし術をコンパートメントに施すと、待ちきれなかったかのようにセドリックがキスの雨を降らせてくる。くすぐったくて笑っていると、それが突然深い口付けに変わる。

「──ん、っセド……」
「会いたかった」
「は、っ、ちょっと……ストップ」

唇が離れた所で、セドリックの口に手を当てつつ息を整える。

「ごめん、苦しかった?」

セドリックはその手を取って指に優しく口付けをしてくる。もういい加減にしてくれないと私の心臓は保たないと思う。

「……慣れてないのよ。それに、」
「恥ずかしい?誰も見てないのに」
「、アスが居るもの」

机に置いたトランクの上で、アスが“バカップルが”と言わんばかりの目をしていた。セドリックが押せ押せなのが悪いと思うのだが、拒めず嬉しいと感じるのだから自分も相当だと思う。

『オレ、ティナの所行ってくるから。ホグワーツで会おうな』
「う、分かった」

器用にコンパートメントを出て行ったアスを見て、セドリックが後ろから覆い被さって来ながら尋ねてくる。

「アス、何だって?」
「……ティナのとこに行ってくるって」

しゅんとする私の首もとに、セドリックが顔を埋めてくる。

「ひゃっ…!?」
「……じゃあ、折角アスに気を遣ってもらったから」

そのまま、舐められるわ、キスマークを付けられるわで、勿論セドリックの暴走を止める人なんて誰もいない訳でして。

「だからここ……コンパートメントだからぁぁああああ!」



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