多重トリップ過去編


□シンデレラ・ナイト
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自他共に認める似た者カップルと化した私たちだが、まさか此処まで似ているとは思わなかった。クリスマスの朝に彼から贈られたプレゼントの包みを開けて、思わず笑ってしまったのはそのためだ。きっと、彼も同じように笑っているに違いない。

「なあに? どうしたの、蛍。ディゴリー先輩、今度はどんな情熱的な贈り物を?」

興味津々なティナが自分のプレゼントをそっちのけて近付いてくる。結構人気もある彼女だが、今夜のパーティーはアルくんと参加するらしい。邪推するようなことは何もなく、蛍はディゴリー先輩と参加するんだからアルが他の子を誘うとは思えない、でもアルの正装を見たい子はいっぱい居る筈だしアルも蛍のドレス姿を見たいだろうから私から誘ったのよ!今特に気になる人もいないしね、と爽やかに言われてしまった。アルくんも異論なく、蛍の側にいるには参加した方が良いだろう、ティナはキリクと行くと思っていたが誘ってくれたから有り難く受けた、と淡々と語っていた。何というか割り切った二人である。キリクの方も同じレイブンクローのルーナ・ラブグッドを誘ってOKを貰ったらしい。一学年下の彼女だが、『ザ・クィブラー』に寄稿したこともあり父親のゼノフィリウス・ラブグッド共々親交があったので驚いたと共に喜んだ。ルーナもクィディッチが好きだから話が合ったのかもしれない。余計に今夜のパーティーが楽しみになった訳だが。

「ふふ、チューリップのブローチ。予期せずお揃いになったわ」
「えっ? 蛍もディゴリー先輩にチューリップのブローチを贈ったの?」

クスクス笑いながら頷くと、本当に仲が良いんだから、と呆れたように苦笑されたけど別に示し合わせた訳じゃないんだからそんな反応をされる由はないと思う。

「私はゴールドのを贈ったの。彼はシルバーをくれたみたいね」
「ならドレスと靴にぴったりじゃない!」

確かにティナの言うとおり、私の今夜のドレス青に銀は合うし靴もシルバーなんだけど。

「なんか気が合いすぎて怖いわね」
「何を今更。蛍はどうして金にしたの?」
「スニッチの色だから」
「ああ、成程」

シーカーたる彼にはこの色しか思い浮かばなかった。休暇中にセドリックのお母さまに見せてもらった彼のドレスローブが黒だったので、それに映えるとも確かに思ったけど、他意はなかった筈なのに。

「で? チューリップの花言葉は?」

ティナがしたり顔で聞いてくる。私達が花言葉で想いを確かめ合っているのは隠してないのも手伝ってもうバレバレである。

「……永遠の、愛」

言った瞬間顔から火が出るかと思った。クサいのは百も承知だ。何のてらいもなくこういう物を贈ってくるんだからセドリックも外国人よね、なんて自分のことを棚に上げて思う。恥ずかしいけどこういう真っ直ぐなメッセージは分かり易いし嬉しいものだ。何も言わないティナを不思議に思って視線を向けると、珍しくあてられたらしく真っ赤になっていた。

「うーん、入る隙がないってまさにこのことね」

熱いらしい頬に手を添えて、ティナが幸せそうに笑う。誰よりも応援してくれていたティナだからこそ、彼女が喜んでくれている気持ちが伝わって此方も笑顔になる。

「その内ネタが尽きそうだけどね」
「大丈夫じゃない? 蛍もディゴリー先輩も優秀だから」

きっと年々グレードアップしていくわよ、と楽しそうにコロコロ笑うティナにつられて笑顔を深める。誓う永遠に負けないくらい、一日一日一瞬一瞬の愛を深く、強く思って貴方に伝えたいと思うのだ。



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