中編・短編
□黒と蒼の邂逅
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月夜の晩なぞ、仕事をするには向かない。余計な明かりで万が一にでも誰かの印象に残ることが出来ないからだ。故に普段よりも慎重に人気のない道を選択したにも関わらず、公園に停めた原付の上でパソコンを開いてるガキという異様な光景に遭遇した結果、俺はらしくもなく唇を開いてしまった。
「おい、こんな所でガキが何してる」
出た言葉は状況的に何ら問題のないもので、子供は保護者がいるにせよいないにせよ、何らかの反応をすべきだと思う。しかし目の前のガキは、何かを聞いているのか全く此方を見ようとしない。苛立ちのままにその肩に手を置く。
「おい──!」
振り返ったガキの髪が、月明かりの下蒼に見えて一瞬息を呑む。この俺が、幼女に雰囲気で圧されるなんてあってはならないことだが、この時俺は確実に目の前のガキと自分の間に聳え立つ明確な壁を感じた。
『────?』
「いや、大丈夫。何ら問題ない。そのままF-16まで突っ切って」
無線か何かからの連絡に淡々と返す少女は、どう考えても見た目と中身にギャップがあった。俺を前に全くと言って良いほど動揺していないガキなんて、その時点で只のガキではない。
「ん、待ってる。じゃあ10分後に」
通信を切ったガキは面倒臭そうに溜め息をつくと、俺にそのまま一瞥をくれる。
「──で、私に何か御用ですか?見ての通り私、純粋に人を待っているんですが」
どう見てもただの人待ちには見えなかったが、彼女の手元を確認しようにももうパソコンはシャットダウンされていた。…仕事の速いガキだ。
「…面白いガキじゃねえか。どうだ?俺と一緒に来るのは、」
手際の良さもパソコンの扱いも遜色なく一級品だと思った。少女の意識が此方にあることを良いことに言った言葉はしかし、色の無い瞳と温度のない声によって拒絶される。
「嫌。アナタ私の話聞いてた?」
言外に馬鹿じゃないの、と言われた気がして思わず胸元の銃に手が伸びる。すると少女はそれさえ予想していたようにせせら笑った。
「やめた方が得策だと思うよ?あと5分も経たずに此処に来るのは只の一般人じゃないし、私警察関係者と縁深いの。仕事を済ませたら速やかに巣に戻るのがルールじゃない?」
甘美な笑顔は年齢に見合わないのに妖艶で、思わずゴクリと喉が鳴る。──欲しい、と強く思う。が、公園の入り口から人の気配が近付いて来るのではどうにも出来ない。目の前のガキの忠告通り、引くしかなかった。だから俺は、少女が去り行く俺の背中に呟いた言葉を、ついぞ聞くことはなかったのだ。
(私の世界を壊すことは、許さない)
(だから次に会った時は───…)
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本編では絶対に無いだろうジンとの邂逅。一人称が“私”なのは死線の蒼モードだから。そして言わなきゃ分からない部分としては、友ちゃんが怪盗キッドの仕事を手伝ってます。これも本編じゃ恐らく絶対ない状況(笑)ただジンと絡ませたかった。
もし友ちゃんが黒の組織の方にトリップしてたらどうなっただろうと思うと末恐ろしいwコードネームはデッドブルー以外受け付けないよ(にっこり)みたいな
Always版でも、三郎が怪我かなんかしてるジンを拾ってきて夢主に「捨ててきなさい」って言われる妄想したけどこっちは100パー有り得ないw
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