04/28の日記

22:06
工藤妹の救済
---------------

※デフォルト名
※殴り書き


 七年前の十一月七日、工藤双葉は父親の新作打ち合わせに付き添う形で外出していた。その頃園児との交流を避けるため草花の観察スケッチにハマっていることにしていた彼女は、優作に許可を取って喫茶店近くの公園にて時間を潰すことにする。ついでに昆虫を点描で作成し始めた頃、近くの電話ボックス付近で騒がしい気配を察知。数人の男に追われる帽子の男はそのまま車道に飛び出そうとするので、思わず声をあげた。

「くるま! くるま来てる!」

 あぶないよ!と駆け寄ってズボンを掴んだ親切な幼女は、そのまま身体を持ち上げられ攫われることとなる。命の恩人に何たる仕打ち、と思ったかは知らないが、どうやら帽子の男は逃走中の犯人らしいということは把握した。人質にされたまま車に乗せられ、すぐさま景色は動き出す。共犯者の存在も横目で確認した。

「やべぇ……サツに顔見られちまった……!」
「だからやめろって止めただろうが! つーかお前何ガキまで乗せてんだ!!」

 二人の男は動揺に震え、軽くパニックを起こしていた。五歳という年齢に見合わない落ち着きで慌てず騒がず、双葉は過保護な母有希子に持たされていたペンダントのスイッチを入れる。入手経路の分からない発信機は可愛い娘の迷子防止の筈だが、誘拐にも非常に有効であった。

「(何の事件……ああ、爆弾魔かな?)」

 あまり顔を動かさないように周囲を確認していた双葉は、サイドブレーキ付近の物入れに画面がついたままになっている携帯電話を発見する。ご丁寧にボンバー!と表示されていたのである意味親切だ。取り敢えず兄の大好きなシャーロックにあやかって4869でキーロックを掛けておいた。

「俺、俺、車道に飛び出そうとしてた……死ぬところだった。この子に救われたんだ」
「今関係あるか!? それ!!」
「お前はバラそうって思ってるだろ!? どっかで無事に降ろしてやって欲しい!!」
「さっきもそうやってサツに騙されたのに懲りねーなテメェは!!」

 仲間割れなう。

「か、金の取り分はお前が多くていいから……!」
「とんだロリコンヤローだぜっ! ……ま、サツも後追ってこれてねぇようだし、こんなガキに俺達の顔覚えられるとも思ってねーが」

 後ろを確認しながら煙草を咥えたことで溜飲を下げたのか、運転している男はようやく荒らげていた声を通常のテンションまで落としたようだった。しかし踏切待ちの信号に引っかかったことで怒りがぶり返したのか、盛大な舌打ちと共に男の手が伸びる。

「!」
「騒がねー点は褒めてやる、ガキ…………なんだコイツ、」
「??」
「……めっちゃ将来有望な美少女じゃねえ?」

 下を向いてた顎をとられて、マジマジと犯人たちに見詰められる女優の娘である。父も作家にしておくのは惜しいくらいイケメンだと思っているので、遺伝って凄いなあとしか思えない双葉だった。

「…………売るか?」
「どこでだよッ! さっき解放するって約束しただろ!?」
「した覚えはねーなァ。どーせならポルノ撮っときゃもう一儲け出来るぜ。ついでに味見しとくか?」

 うわああああああああ、という内心のドン引きを堪えての、何言ってるか分からないピュア幼女の首傾げを炸裂した。双葉を抱えている男は人の良さが微妙に滲み出ている為クリティカルヒットを出せた気がするが、如何せん立場が弱そうだったので時間を稼いでくれることのみを期待する。

「ッ、お前……悪魔かよ……!」
「はっ! 何今更イー子ぶってんだよ!! テメェは誘拐犯であると同時に、人殺しにもなるんだぜ?」

 ドヤ顔で運転席の男は例の携帯をチラつかせた。まさか……!と息を呑む帽子の男に、騙してくれやがったサツに礼をしねーとな?とニタニタ笑って起爆スイッチとして電話を発信するつもりだったのだろう。しかしボタンを押して出たのは、パスワードを入力してくださいの文字であってBomb!というゲームじみた悪趣味な変化では無かった。

「!?」

 男達が驚いている隙に、車に近寄ってきていた屈強な男達が一斉にドアを開けて拳銃を突きつける。思わずホールドアップした帽子の男から解放された双葉は、スルリと身体を落とすように助手席から抜け出し、小さな身体からすれば高い段差を地面目掛けてぴょんと飛び降りた。地上では、駆けてくる優作の足元が見えてほっこりした。

「双葉、怪我はないか!?」
「だいじょーぶ!」

 思わずブイサインを作ってしまった双葉に、優作は嘆息を吐きつつその頭を撫でる。

「全く、我が家の子供たちは逞しい」
「パパとママのこどもだからねっ!」

 結果的に色んな人を救ったことを、双葉は知らない。



+++

萩松救済としてこういうのもありかなって…!(なおキャラクターとは絡まない)



☆コメント☆
[紅姫。] 05-03 01:19 削除
初めまして、こんばんは。
この話が面白かったので、コメントさせていただきました。
たまにネタでもいいので、浮かんだら続きが読んでみたいです。
では、お邪魔しました

[湊] 05-19 01:25 削除
紅姫。さん初めまして!
新一妹主のお話はぼちぼち続きを執筆中なので気長にお待ちいただければと思います。
誰かの救済ネタなど短い文章の場合はこちらのようにネタに載せますね^^
コメントありがとうでした。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ