散る前に。私のこの手で咲いておくれ・・・

□目指すは人気投票×位!!
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テイク3、の続き
ふわりと。風もない穏やかな空に舞う粉雪のように。
鴆は緩やかに、そして軽やかに、リクオの元に降って見せた。
デッド アンド デッド。よりにもよって選択肢なし、読んで字の如しな絶対絶命の危機。地獄絵図と化すかと思われた船上に。
馬鹿馬鹿しい(あ・・・いっちゃった(^_-)-☆)茶番で発動された畏れ、鴆毒の被害は・・・なさそうである。

完璧だ。これで文句はあるまい。リクオに強く抱きしめられながら、鴆は思ったのだが。
「鴆、分かってねぇ」
残念ながらリクオはご立腹で、再び鴆の後頭部に拳を落とす。拳と頭のぶつかった音から察するに、相当痛そうだ。
「痛てぇ・・・ああ?」
『ああ?』の表記は、濁点をつける必要があると思われる。つまりは、かなりドスが効いている。殴られた後頭部に手をやり、リクオを睨みつける鴆の顔は流石、任侠の世界に生きる漢といった感じ。
アレ?デジャヴ?アレ?この流れはリテイクですか?

ものすごく頑張った描写も台無しだ。『だからおめーはダメガネなんだよ!!』幻聴すら聞こえる。
※ダメガネ=管理人。『やればできるメガネ』は死んだ魚の目をした、天パーで糖尿でマダオな、主人公っぽい人がいる世界には存在するが、ここにはいない。メガネ=本体と思われているところは被っていても、管理人にはやってもできないことの方が多い。つか、注釈長っっ!
諦めろ、これが拙宅の限界だ。ハイクオリティを求めるのなら、リンク先の素敵サイト様にでも飛んで頂きたい。

結構イイ線いってたハズ・・・ヒロイン・少女漫画、無謀にも頑張った。いつもと変わらないとか言う正論は受け付けない。
だから、問題は、そこじゃあないんだ!!
「鴆、お前ぇ・・・
 着くずれどころの話じゃあねぇな」
問題は。
想定しておくべきだったのかもしれない。『鴆は美しい鳥』なのだから・・・鴆に当てられたのはリクオだけでなかった、そこである。

能力を具現化した羽根が花弁のように重なり合い、空を覆い尽くし咲く華となる。空を制するように羽を魅せた、鴆の美しさに。誰もがのまれた。
リクオに余裕があれば、展開も違っていたろう。
美しいものは自慢したくなるもの、それが真情。しかし、己だけで愛でていたい。他の誰かが見ることも、懸想することなど決して、許せない。これもまた、真情だ。
鴆を抱く腕は外れることなく、あたかも鴆と外界を遮る、小さな籠。
愛玩鳥(ペット)よろしく情人を囲ってしまおうかと。鴆にそんな類の執着を示しているリクオの心は穏やかでない。
「随分簡単に、肌晒すじゃねぇか・・・
 ふたりっきりの時にゃ、もったいつけるのになぁ。
 ああ・・・いつものは、焦らして愉しもうって。
 そういう趣向だったのかぃ?」
皮肉を交え、吐き捨てられた言葉。
艶っぽい戯言めいて、それなのにどこか刺々しいのは、リクオが鴆を詰っているからに他ならない。 

美しいものに罪はない。毒を以て生まれたのと同じく、備わって生まれてしまっただけなのだから。
しかし無防備に肌の露出を高くしてみたり、リクオの真情が分からず呆けてみたり。わざとなのかと思える程の鈍さは、こうして責められても仕方ないことではないか。
「リクオ、おま・・・ふたりっきりっ・・・とか・・・!!」
茫然と聞いていた鴆の、鴆を包むリクオの袖でも隠しきれぬ、耳朶や頬が。視線に晒されている間に、目にはっきりと分かる程濃く、赤く色づいていった。
「そもそも!!てめーが羽出せっつったんだろぉが!!」
着物を脱いだのも、リクオの為だ。鴆は羞恥の余り、怒鳴り散らした。
鴆が常用している着物に羽用の穴はない。だからといって、このためだけに着物に裂け目をつくるわけにもいくまい。
羽を広げるのに着物が邪魔だ。上半身を晒す他ない。
確かに・・・鴆の主張に間違いはないが、リクオは百も承知のうえで腹を立てているのだ。今このタイミングでの反撃は、火に油を注ぐことにしかならない。
的確に怒りのツボを刺激してくる情人は、リクオにとって可愛さ余って憎さ100倍といったところだろう。

薄笑いを浮かべたリクオの口元が引き攣る、そんな些細な変化に、鴆すら気づくことはなかった。
「鴆。てめーには後でじっっくり・・・仕置きが必要だなぁ。
 先にこっちだ。おい、てめーら」
影の落ちた顔に、双(ふた)つの紅が血を浴びた刃の如く光る。凍てついた空気は肌を刺し、肺を圧迫する程の威圧感にのみこまれる。
「鴆の肌見た奴ぁ、正直に手ぇ挙げろ。
 安心しろ。殺しゃしねぇよ」
地を這う絶対零度の低音に、身が竦み上がり、歯の根が合わぬ。畏ろしいまでの殺気は、中てられているだけで心の臓を止めるのではないかと思われた。

「目ぇ潰すか、目ぇ抉るか。
 どっちがいいか・・・それ位は選ばせてやるぜ」

リクオの手には、いつの間にか酒の満たされた大きな杯が・・・口元に笑みを浮かべ、慈悲深い?言葉で騙そうったって、これじゃあ無理がある。
手を挙げれば、目だけで済むまい。タマをとる気だ、リクオは。
逃げようなど、今更。もう遅い。下手に身動ぎしてみろ。リクオに黒と判断され、明鏡止水で塵にされるに決まっている。
妖怪だって驚きもするし、怯えもする。純粋な恐怖に襲いかかられ、腰が抜け尻をつく位、まだいい方だ。泡をふいて倒れる者すらいる。
理不尽な仕打ちに正論を並べて、リクオを止められる勇者はいない。誰だって、命は惜しい。まさかこんなくだらないことで、命を失いたくはない。




・・・・・・リクオ、止めろ。畏れの無駄遣いだ・・・
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