DREAM
□黒シグによる虫の魅力
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「ねえ、シグ。」
「なに?ナマエ」
「どうしてそんなに黒くなったの?」
「わかんない。」
「覚醒しちゃったのかな?
あ、それとも、もう一人の僕とか?」
「違うってば。 ちゃんと僕だよ。」
突然シグが黒くなった。
綺麗なシアンの髪も黒く染まってしまった。
最初はとても驚いたけど、本人に苦痛はないようだしそれはよかったと思うけど
シグがハキハキしゃべるとシグじゃないみたい。
でも。
「あ!ムシだぁっv」
あの無邪気な笑顔… やっぱりシグだ。
「ねぇー ナマエ」
「なに?」
「髪の毛にムシついてるよ」
「えっ… いっいやーッ!! ヤダヤダッ!!しっ… シグーッ とってー><」
「わっ 今とってあげるから。 暴れないでよナマエ!!」
「!?」 シグは片手であっさり私の両腕を押さえた。
あれ…? シグってこんなに力強かったけ?
う…動けない。 むしろちょっと痛いかも…
「とれたよ」
「あ、ありがとう。」
「手。痛くなかった?」
「ぜんぜん大丈夫だよ^^」
「よかった。 …前から気になってたんだけど、なんでナマエはムシ嫌いなの?」
「だって… ムシ怖いし… 気持ち悪いんだもん…」
「え」 ピシッ
空気が止まったのを感じた。
やば… 死亡フラグ?
「ナマエ」
「な、なんでしょう?」
「ムシは気持ち悪いものじゃないよ!
ムシはとても素晴らしいものなんだよ
たとえばカブトムシ!
カブトムシの魅力はあの鈍く光る体。
つぶらな瞳。
スタイリッシュで野性的な角。
時には凶器にもなるイカリのような爪。
ダイナミックな飛行能力。
まさに外骨格の芸術品だよ!
そんなかっこいいものなのに、気持ち悪いなんて失礼だよ。」
「あ、あの シグさn…」
「そして夢中になってゼリーを食べる時の顔がカワイイのだよ。 昆虫を好きな人には、食事の様子もカワイク見えるものなんだよっ!」
「うん。 わかったよ。 わかったから。
私が悪かったから;」
「まだナマエはわかってないよ! あとクワガタもかっこいいんだよ!
昆虫とは思えない力もあって、アルキデスの短歯は骨を砕くらしいよ。
それにきれいなクワガタもいるよ。色が多彩なんだ。
幅広くいろんな種がいるんだからそれも楽しみになるんだよ。
自分で育てる楽しみもあるわけだし。大きく育てたり。世界にこんなのがいると思うとわくわくしちゃう!純粋にかっこいいよ!」
「うぅ。 寒い…」
シグに力説されること三時間。
あたりは暗くなり冷たい風が吹き始めた。
「ねぇ。シグ。 そんなに喋ってて疲れない?」
「うん。何か力が溢れてくるから大丈夫。」
「そ、そうなんだ。 …ねぇ。もう帰ろうよ。 暗くなっちゃう。」
「えー …今日ナマエの家に泊まっていい?」
「ええっ なんで?」…ものすごく嫌な予感がする…
「それはもちろん、ムシの魅力を理解してもらうため。」 やっぱり…
「もっ、もう十分理解したから。…ね?」
「あ。ムシついてるよ。」 「キャッー!!」
「嘘。」 「え」 …やってしまった
「それじゃあ、ナマエの家へレッツゴー」
「えっ シグっ 待ってってば!!
もう勘弁してよーっ;」
この後、午前五時までムシの魅力について語られた私だった。
「もう絶対黒シグの前では、ムシの事を話すのはやめよう…うん。」
-END-