べるぜバブBL、NL小説

□君は眠り姫
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※みんな(東邦神姫+古市)男鹿大好きなので男鹿総受け気味です
ふるおが落ち
古市が女々しかったりするのでおがふるにも見えるかも…?
よければどうぞ








「どういう事ですか!男鹿が目覚めないって!」
「さぁ、どういう事だろうな?」

クスリ、とヒルダは悪魔のような笑みで(まあ、実際悪魔なのだが)楽しむように古市を見ている。
何故この人はこう、厄介事を持ち込んでくるのだろうか。
そう思いながら、古市はため息を吐くしかなかった。

事の発端はヒルダに遣わされたらしいアランドロンに、男鹿の部屋に転送されてから始まった。
というか、その厄介事を知らされた。


「古市殿、ヒルダ様が、男鹿殿が目覚めなくなったからこい、とおっしゃっていまして」

そう告げるや否や、アランドロンは古市を転送した。
わけがわからぬまま男鹿の部屋につれてこられたらしい古市は、本当にわけがわからなかった。
目の前にはベッドで眠っているらしい男鹿と、悪魔のような笑みを浮かべてこちらを見ているヒルダがいた。
さっきのアランドロンの話からすると…男鹿が目覚めなくなった、と。

とりあえず

「どういう事ですか…わけがわかりませんよ」

そう言うしかないのである。
毎日毎日男鹿に巻き込まれ非日常を体験している古市ではあるが、やはりいきなり転送されほとんど説明も無しなのだ。
どうすれと言うのだ。

「アランドロンが言った言葉、そのままだ、男鹿が眠ったままなのだ」

その顔はいつもの表情で、なんら代わりはない。
別に困る事ではないのではないか?
むしろ楽しんでいるようにも見える。
なのに何故俺は呼ばれたんだ。
やっぱ楽しんでるよなヒルダさん。

「なんでそんなことに…?」
「男鹿が悪いのだ、魔界の物を口にするから」

その顔はやはり楽しんでいるように見える
もしかしてヒルダさん…と古市はある考えを浮かばせる

「あの…一応聞きますけど、それってどこに置いてたんですか?」
「む?男鹿の部屋のテーブルの上だが?」

…やっぱり。と古市は思った
ヒルダはそれがどうかしたか?という顔をしている

「ヒルダさん…それ男鹿が悪いっていうか…」
「何か言ったか?」

ヒルダはいつもの顔で、だが殺気を出しながら言うものだから
古市はヒルダのせいとは言えず、「なんでもありません…」と言うしかないのだった。



****



「えっと、状況を整理すると…男鹿が魔界の薬みたいな物を飲んで眠ってしまって、しかもこのままだと男鹿は一生目を覚まさない、と?」
「あぁ、そうだ」

男鹿が飲んでしまった薬は、ある魔界のおもちゃセットの薬だという。
そのせいで眠り、しかもこのままだと一生目覚めない

「それで…このままだと、って事は男鹿を目覚めさせる方法はある…って事ですよね…?」
「察しがいいな、そうだ。方法はある」
「それは…?」

古市は心配だった。
魔界のおもちゃだし、もしかしたらその薬は毒で、その毒を誰かが肩代わりしてやらなきゃならない。とかすごい厳しかったりするのでは?と。
だって魔界のおもちゃロクな物ねぇもん!
とナース事件の時に実感した事を思い出す
いや、でも案外楽だったりもするのかも…
色々考えが浮かんでいた中ヒルダから返ってきた答えは。

「人間界では、眠っているお姫様を、運命の王子様がある方法で目覚めさせる、という話があるのだろう?」
「え?それって、白雪姫…とかそーゆーのですか?確かにありますけど…って…まさか…」
「その話を魔界のおもちゃを作っている一人が気に入ったらしく、その話をモチーフにおもちゃを作ったらしい」
「それが…この薬…?」

ということは、なんだ?
もしかして男鹿を目覚めさせる方法って…


キス…なのでは?



「正解だ、古市」
「心読まないでくださいよっ!てかキス?!なんですかその展開…!てか…それならヒルダさんがキスしちゃえば終わりじゃあ…いや、男鹿ばっか美味しい思いするのもアレだけどっ!」
「古市、正気か?私があのドブ男に?そんな事するくらいなら死んだ方がマシだ」
「そ…そうですか」

酷い言われようだな。
と古市は少し男鹿に同情する
それを知ってか知らずかヒルダは話を続ける

「というか私がしても意味はない、私はこの男の事など好きではないからな」

私が好きなのは坊ちゃまだけだ、と。
そのヒルダの言い様からすると、もしかして…
嫌な予感が過ぎ去った


ヒルダさんは

「キスの相手と両思いでなければ男鹿は目覚めん」

そう、言い放った。





「それって…すっごいハードル高いんじゃあ…?」

いや、実際高いだろう?
だって両思いだ。

百歩譲って
男鹿の事が好き。
という人がいたとしても
男鹿が誰かを好き…というのは
それはもう隕石が地球に落ちるくらいありえないのではないか…?


「あの…男鹿に好きな人なんているんですか…?」
「私もそこは疑問でな、だがあの薬は飲んだ人間に好きな相手がいないと効果は発しないのだ。つまり、好きな相手がいないと眠ることなどないはずなのだ」


つまりは…男鹿には好きな人がいると言うことだ。



「ま…まじ…?」

古市は、意外な事実を知り呆然としていた。
そんな古市にヒルダは、

「とりあえず古市。貴様がキスをしてみたらいいだろう、どうせ男鹿の事が好きなのだろう?」

と、いつもの蔑むような目で言うのだが古市は何故好きだと知っているのかとツッコミも入れず動揺したように目を泳がせた

「へっ?!…え…えっと…」
「?」
「たぶん、俺が好きでも男鹿は俺の事好きじゃないと…思います…」

その、古市らしからぬ消極的な台詞にヒルダは少し驚く

「何故だ?」
「俺…最近あいつに避けられてたし、しかも、嫌いだとか言われちゃって…あ、はは……はぁ…立ち直れない…」

どよん。と暗い空気をまとわせている古市に
アランドロンが、それは照れ隠しなのでは?と言おうとしたのだがそれは玄関のチャイムの音によって遮られた


「来たか」

ヒルダは楽しそうに笑みを浮かべドアを見つめていた。

え、なにがですか?と言おうとした古市の台詞は男鹿の部屋のドアが開かれたことにより必要なくなった。


「お…男鹿が変な薬で倒れたって聞いて…」
「え?邦枝先輩?」

「今なら男鹿を倒せるかもなぁ♪」
「ふん、卑怯なやつだなぁ、俺だったら本気だしゃ一発だ!」
「姫川先輩と神崎先輩も?!」

「男鹿と喧嘩できるって聞いたんだが」
「と…東条先輩まで…」


どーなってんの?
てかなんでフツーに東邦神姫が男鹿ん家来てんの?!
まじで意味不明な展開に頭を抱えるしかない古市。
ただでさえ男鹿にふられて落ち込んでたのに…


とりあえずドアの前にたたずむ東邦神姫とヒルダを交互に見る。
おそらくヒルダが面白がって呼んだのだろう


「とりあえずお前ら男鹿にキ「うわぁぁぁヒルダさぁぁぁんなにをををを!!」
「え?キ?なに?」
「いやいやなんでもないんですよあはははは」
「?」

ヒルダが直球に言おうとしているのを古市が必死で止めに入る。
ヒルダは絶対楽しんでいる。
男鹿で遊んでる。

最悪だ…ふられた上他の人とキスしてる姿なんて見てしまったらもう俺は立ち直れません!泣

でもよく考えたら邦枝先輩は…可能性的には一番高い人ではないか?
だって男鹿の事好きだろうし。
男鹿も意外と好きなのかも…ってなんか悲しくなってきた

そのなんとも言えない古市の視線を感じ取ったらしい邦枝は
「な…なに?」
と古市に聞く。

「あの…邦枝先輩……」

どうしよう、言ってみるべきか?
でも…


「邦枝、男鹿とキスして男鹿が目覚めたら両思いと言うことだぞ、してみたらどうだ?」
「だぁぁぁヒルダさぁぁぁんなにいってぇぇぇ」

いや間違ってないけども!
でもその言い方は!
あぁぁあぁもうヒルダさんはもう!
誰かこの人止めてくれ

だがすでに時遅し。
ヒルダの台詞を聞いてしまった邦枝は
「…え?き…ききき…きす…??!////」
と裏返った声で言葉になってないその単語を連呼しながらみるみるうちに真っ赤になっていく
そりゃあ好きな人にキスしてみろだとか目覚めたら両思いと言うことだとか言われたらそうもなる

「どーゆー事だオガヨメ…なんだそりゃ」
「えーとですね、姫川先輩…これには深い事情が…」
「それより喧嘩…」


気づけば男鹿の部屋は騒がしく、わけがわからなくなっていた
邦枝は、男鹿とキス?!とかぶつぶついいながら顔を真っ赤にさせているし
東条は喧嘩したいから男鹿起きろーだとかいって寝ている男鹿を揺さぶっているし(たぶんキスとか現状一番理解してない)
姫川と神崎はヒルダにキスの話を聞かされ面白がっているし
邦枝もそれを聞いて、男鹿に好きなひとがっ?!とか言いながら今度は青ざめているし

そして元凶のヒルダはその光景を楽しそうに見物している有り様だ。


「と、とりあえず落ち着きましょう!そんで!……お…男鹿の事好きだって人手挙げてください…」

こうなったら男鹿の事好きな人にちゅーしてもらっちゃえぇぇとやけくそになりだした古市の質問に手を挙げる一同…
「…って!なんでみんな手ぇ挙げてるんですか?!!」

なんと、ヒルダ以外みんな、つまり東邦神姫全員が古市の質問に、つまり男鹿が好きだと手を挙げていたのだ。

「わっ…私は…ほ…本気で好きだし…///」
男鹿が私の事好きなのかはわからないけど
と半ば諦めの色を含めて言う邦枝。

「俺も好きだぞー可愛いし」
とさっきまで男鹿を揺さぶり喧嘩ーと騒いでいたのをやめ、今度は寝ている男鹿の頭を和やか笑顔で動物に接するようにわしゃわしゃ撫でて言う東条。

「あんなの好きにならない奴の頭がおかしいだろ」
「あ?オレの方が好きだし?」
と何故か言い合いを始める姫川と神崎。


その光景と台詞に、古市は絶句した。
男鹿を好きな奴は結構いるとは思っていたがこんな身近な不良さんたちがそうだったのか
もしかしたら、この中に男鹿の好きな人がいるのかもな
よかったじゃん、男鹿、目ぇ覚めるよ
古市は悲しかったが、男鹿が無事ならそれでいいと思った。

無事に目覚めて、キスした人と両思いになれて、幸せじゃん、男鹿。

―よかった、と心の底から思えてるだろうか?

いや、やっぱ男鹿の好きな人が羨ましいや。
そんな事を考えていたら、瞳の奥に涙の存在を感じ取った。
あ、やばい、なんか本気で泣けてきた。
涙を戻そうと頑張るが戻ってはくれずどんどん視界が潤んでくる
思わず俯いた古市に
「古市くん…?」
と声をかける邦枝
その声にびくん、となった古市はこんな情けない姿は見られたくない、と
「す…すみません、ちょっと、トイレ…」
とすぐさまその場を後にした。
声が震えていなかっただろうか?
と心配になったが確かめるすべもないしもういいやとやけくそになっていたら階段を下りた所で美咲さんと鉢合わせてしまった。

「あらたかちん、今日はいっぱい友達来たわねー!辰巳も成長したなー…って、たかちん?!なんで泣いてんの?!」

東邦神姫やヒルダに見られまいと俯いたのが悪かった
部屋を出たら涙が溢れてしまったのだ
それを運の悪いこと、拭う前に美咲に見られてしまった
心配して声をかけてくる美咲に古市は、「大丈夫です」と言い、トイレ借ります、と言ってトイレの方向へ逃げ出した
今のは完全に声が震えていた
ほんと、なさけないな
トイレの中で拭いきれない涙を溢しながら
一人、震えていた。



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