イナゴBL、NL小説

□お返しは手作りで
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なんとなくいつもの部活終わり
なんとなくそこに霧野先輩がいたので
なんとなく聞いてみることにする

「あのー、霧野先輩?」
「ん?なんだ?」
「ええと、先輩は、ホワイトデーどうするんですか?」
「なにが?」
「なにがって…お返しに決まってるでしょ」

ホワイトデーといえばバレンタインのお返しをする日なわけだが、言う人が言えばホワイトデーは倍返しだとか、ホワイトデーといえばクッキーだとか
まぁ色々ある。
でもそれは別に絶対とかいうわけでもないし
倍返しなんて俺の小遣いではきっと無理だろう
そもそもこの先輩は大量にチョコを貰っているわけで
倍返しなんてこの人こそ無理だと思う

「あー、まぁ、毎年考えはするんだけどな…さすがにあの量のチョコは用意できるかどうか」
「紙袋いっぱいにもらってましたもんねー」
「神童は毎年高級チョコでお返ししてるけどな」
「それはその高級チョコ目当ての人もいたりするんじゃあ…」

倍返しどころではないお返しとか神童先輩の小遣い事情とか色々気になったりもしたが、今はそれじゃない!
俺が聞きたいのは

「お返しってどんな感じのがいいんですかね?」

ホワイトデーのお返しを、どういうものにするのがいいか、という事だ。

「どんな?うーん、別になんでもいいと思うぞ?」
「なんでもとか言われても……」
「ん?誰かにお返しするのか?」
「女子マネに貰ったじゃないですか、クラスの人に義理チョコ貰ったりもしましたし」
「あぁ、そうか」

納得したように返事をして
そこから更に何か思い付いたような顔をする霧野先輩

「天馬か」
「は?」
「いや、貰ってたろ?天馬に」
「あぁ、友チョコ」
「そんな真剣に悩んでんのって天馬のためだろ?」
「な、なんでですか!」

照れる俺ににやにやと笑みを向けてくる霧野先輩
てかなんで俺が照れなきゃならないんだ!

「好きなんだろ?天馬の事」
「は、はぁ?!なに言って…」
「だってバレンタインからお前、やけに天馬を気にするようになってたろ」
「え…」
「無意識か?ずっと見てたろ?天馬が誰かと話してると不機嫌になるし」
「え…えぇ?!」

嘘?!そんなわかりやすいのか俺?!
いや、確かに少しそうかな?とかは思ってたよ!
好きかもとか思ったりもしたけど!!!!
でも…でも……っ

「つーかなんでそんな事知ってんだよ!!」
「んー?なんとなく見てたらわかる」
「見んな!!!//」
「…………」

なんだか急に恥ずかしさが込み上げてきて
俯いて無言になる

やっぱり俺は天馬くんの事が好きなのだろうか?
まぁ確かにホワイトデーの事考えてる時もほとんど、天馬くんになにあげたら喜ぶかな?とかしか思ってなかったけども!!!


「…でも……」
「ん?」
「いや、なんでもないです」

そう言って、首を傾げる霧野先輩を放置しふらふらと部室を出た。


でも………もしかしたら天馬くんには好きな人がいる…かもしれない。

確証はない
かもしれないってだけ

でも、もし好きな人がいたら…


「ていうかそもそも男!!俺も天馬くんも男!!」


そもそもの問題を頭を抱えながら叫ぶ
いや、もうほんと泣けてきた
なんていうかまだ自分の気持ちすら曖昧なのにもう失恋しそう泣きたい


「はぁ……いや、とりあえずお返しの事だけ考えよう…」

気が滅入る考えはもうやめよう
とりあえずどんなものがいいのか
お返しなんてしたことないからわからない!!


考えながら歩いていたらもうお日さま園に着いていた。


***


「うーん…」

俺は悩んでいた
まだ悩んでいた
早く考えて買うかなんかしないともうホワイトデーは明日だ
どうしよう

「ふ、普通に買うか?それとも…」

バレンタイン特集だのチョコレートうんぬんの特集だのが組まれた雑誌を睨みつけながらぶつぶつ言っていたら

「マサキ?入るよ」

コンコン、とノックの音と声が聞こえてきた
返事をする間もなく声の主が入ってきた

「ヒロトさん…」

雑誌を睨み付けていた表情のままヒロトさんの方を向いたためか少し驚いた顔をするヒロトさん
そして雑誌に視線を向けたかと思うと少し明るい表情になる

「マサキ、もしかしてホワイトデーのお返し考えてるの?」
「うん…そうなんですけど…」
「俺にもくれるの?!」
「え、あ、まぁ、バレンタインくれましたし」

そう言うとヒロトさんの表情がもっと明るくなる

「やったよ!マサキがお返しを!」
「そ、そんなに喜ぶ事…?」
「当たり前!」

まぁ、考えてみたら去年まではお返しと呼べるものは何もあげてなかった気がするからな…
今年はじめてのお返しにヒロトさんは小躍りしそうなくらいうかれている

「でもなんでマサキがお返しなんて!」
「うぐ…去年は…小遣い事情とか色々あったんですよ!!!」
「ふーん?」
「な、なんですか」

今度は疑いをかけるような、探るような目で見てくるヒロトさんに少しぎくっとする

「バレンタインくれた人の中に好きな人でもいるの?」
「えっ??!」
「俺のお返しなんて真剣に考えてくれたことないのにひどい」
「ちょ、何いってんだよ?!!」

図星をつかれ、ちょっとヒロトさんに悪い気がしてきた…確かにそういうこと真剣に考えたのは初めてかもしれない
…やっぱり、好きな人ができたから…?


うぅ、もう確実だ。


俺は、天馬くんが好きなのだ。


****




「あー、うん、無理」

俺は台所で、板チョコと戦っていた
もちろん比喩だが、これは……

「マサキ、頑張って!!」

後ろで応援してくれてるヒロトさんの声にも苛立つくらい、もう駄目。

結局あの後、ヒロトさんにお返しは何がいいかと聞いた
すると間髪いれず、はっきりと
手作りチョコ!!!
といい放った。

まぁ、そりゃあ好きな人へのチョコならば手作りが妥当だとも
でもさぁ、男が手作りとか変とか言う以前にさあ、手作りってさぁ
…難しいです。

いや、これがほんとにね?
料理は得意な方ではないが苦手なわけでもない
でも…うーん、何が駄目なんだ?

「いや、ていうかさ、マサキ、十分美味しいよ?形はいびつだけど、そこまでこだわらなくても」
「…そ、そうですね」

好きな人への、という想いから、少しの失敗も許せないと意地を張っていたのが原因で、そこそこ出来てはいたものの納得できないでいた
そりゃ今までまともに手作りチョコなんて作ったことのない奴がプロ級の美味しいチョコ作りなんて無理なのだ
そろそろ意地を張るのはやめて、想いを込めたそこそこ美味しいチョコを作ろうと、ヒロトさんやリュウジさんに励まされたのでそうすることにする

とりあえず、天馬くんに不味いチョコはあげらんないからね…!!
そう思い、最後のチョコ作りを開始するのだった


ちなみに駄目だ駄目だと作り直しまくっていたチョコの残骸はヒロトさん達やお日さま園の面々が、上手い上手いとむさぼり食っていた


*
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