空色パズル
□8/15 帝光黄黒の日
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「えっ!?」
黒子っちの言葉につい持ち上げたバックを手から離してしまいそうになり、慌てて持ち直し目の前の黒子っちを凝視する。
――え、黒子っち今なんて言った…?
相変わらずポーカフェースでよく見ないとわからないほど表情がお堅い黒子っちは、いつもの無表情でこてん、と首を傾げ
「名前で、呼んでくれませんか?」
か、可愛い…!つい漏れそうになる本音をごくんっと呑み込んで私は気まずさを和らげるように一つ咳払いをする。
だけどまあそんなんで気まずさが直るわけもなく、ぶわぶわわっと恥ずかしさと妙な緊張の汗がこみ上げてくる。
どうしよう、私の聞き間違いじゃなかったみたいだ。
「ダメですか?」
「えっ!?や、あの…ダメとかじゃなくてっスね…」
「なんですか」
むっと眉を顰めて私の制服の裾をきゅっと握る黒子っち。
その視線から逃れようと後ずさりをして無意識に背伸びをする私に少し屈んだ黒子っちが私を見上げる
う、うわあああっっ上目使い!じりじりと迫ってくる黒子っちにドキンドキンうるさい心臓。
なんだか気まずくなってそっと視線を逸らすと、バッと勢いよく頬を掴まれ強制的に視線を合わせられる
「テツヤって呼んでください」
「黒子っち近い近い近い!!」
黒子っちの綺麗な顔が目の前、その水色の瞳に吸い込まれそうになる。
黒子っちの顔もいつもより赤いしなんか笑顔がふにゃふにゃしてて、私の胸はもうきゅんきゅんが止まらない
「テツヤっちって呼んでくれても構いません」
「うう…っ」
「名前呼んでください」
黒子っちの笑顔だけで私の心臓は爆発しそうなのに、黒子っちはそんなこと知らんとでも言うようにどんどん私に近づいてくる。
黒子っち実はよっぱらってるんじゃなかろうか。
赤司っちとか青峰っちにお酒入ったチョコとか騙されて食べちゃったり、無理矢理食べさせられたりとか
あの2人のことだからやりかねないし、何より普段顔にはあまり出さないけど案外恥ずかしがりやな黒子っちが押せ押せなんて
「それもいいんだけど…っこれは…!ちょっ黒子っち近い!マジ近いっス!」
「いいじゃないですか」
「ええ!?」
よろしいけども、黒子っちの顔が目の前にあって息が触れ合うくらい近いと心臓がもたないというかなんというか。
ドキドキからドッドッに変わった心臓の音を聞きながら、さり気なく黒子っちの胸板を押すけれど黒子っちが退く気配はない。
変なところで頑固な黒子っちのことだから、私が黒子っちのことを名前で呼ぶまで離してはくれないだろう
唇と唇が触れそうな距離に私は顔を真っ赤にしながら固まっていると、とんっと肩に重みがかかり目の前は誰もいないいつもの教室の風景。
「黒子っち…?」
視線を下に逸らすと、黒子っちは私の肩に頭を乗っけ私の腕に手を回してそっと私を抱きしめた。
黒子っちの髪より少し濃い水色のカッターシャツが目に入る。
なんだかその背中が愛おしくて手を回すと、黒子っちも腕から回していた手を退けて私の腕の間から手を回す。
教室に誰もいなくてよかった。こてんと黒子っちの肩に頭を軽く乗せる。
すると黒子っちも私の頭にこてんと頭を乗せ、すり寄るように私を強く抱きしめた。
「すみません」
「んーなにがっスか?」
「無茶を言って、僕らしくなかったですね」
「あはは確かに黒子っちらしくなかったっス」
「すみません…」
か細い声でそう謝って私をぎゅうっと抱きしめる黒子っちを私もぎゅうっと抱きしめ返す。
黒子っちの香りに包まれて、私はなんて幸せ者なんだろうなあ…
幸せを噛みしめ、その幸せに浸っていると黒子っちが私を抱きしめる力を弱め、私の肩の制服に顔を埋めた。
首を傾げる私に黒子っちはちらりと視線をよこしただけで、また私の肩に顔を埋めてしまった。
「黒子っち?どうしたの?体調でも悪いんスか?」
「いえ、違います」
心配になって黒子っちの背中に手を回しながら声をかけつつ黒子っちの様子を横目で見る
「あ、」
「っ…見ないでください」
黒子っちは私の肩に顔を伏せていて全部は見えないけど、確かに黒子っちの耳は赤く染まっていて。
驚きで目を見開く私に黒子っちはまた私をちらりと見て、観念したように小さくため息をついた
「こんな事言うの恥ずかしいですし、馬鹿じゃないのかと一蹴されても文句は言えません」
「うん?」
「もし、僕と##NAME1##さんが結婚したらいつまでも"黒子っち"呼びじゃ…どうしようと思いまして」
「っっ…!」
「すみません焦りすぎましたね…##NAME1##さん?」
「く、…くろ、…黒子っちの馬鹿!」
「え?はいすみません」
ばかばかばか!と一心不乱に黒子っちの胸板をぽかぽか殴る私に黒子っちは一度不思議そうな顔をして、少ししゅんとする。
ああもう!黒子っちはどうしてそんなあざといんスか!ばか!
なんて理不尽極まりない言葉を投げかける私に黒子っちはやはり困った顔で「すみません」と私の背中から腕を離す
「やだ!違う…んスよ!」
離してほしいわけじゃない。
バッと勢いよく私から離れようとした黒子っちの首に抱きついて、離れないようにぎゅうっと強く抱きつく。
「##NAME1##さん…?」
「テ、テツヤ……っち」
名前を呼んで数秒。
最初は恥ずかしくって慌てていた私だけど何も反応しない黒子っちを不審に思って小さく首を傾げ、抱きついていた手を緩める。
すると黒子っちも気付いたのか私からゆっくり離れて、私の瞳をじっと見つめた。
「黒子っち顔真っ赤っスよ」
「##NAME1##さんも顔真っ赤です」
なんか、すごい幸せな青春過ごしてる気がするっス
奇遇ですね。僕も同じこと考えてました。
太陽と月の距離
(帝光黄黒の日!)
title:涙星 帝光黄黒ちゃんの日です…タイトルで不快になられた方すみません…!
お祭りとかでもよかったんですけど、長くなりそうだったので。図書室でお勉強とかでもよかったですねー