空色パズル

□夏夜を彩る星の歌
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それからゴミを捨てに行って帰ってきた黒子っちに少しだけ星を教えてもらった。



「あれがはくちょう座のデネブ、こっちがわし座のアルタイル、そしてこと座のぺガです。」

「夏の大三角形、っスか?」

「はい。あっちにさそり座がありますね」

「あっほんとだ!」



人に教えることがあまりないのだろう。寄り添って、少し楽しそうに星を指さす黒子っち。

私は話を聞いている素振りをして、楽しそうに話す黒子っちの横顔を「ああ綺麗だなあ」って眺める。

黒子っちのきらきらした水色の瞳の中に、静かで綺麗な星が写りこんで、まるで海に星が写ってるみたい。


本当に、このまま時が止まって、ずっと一緒にいれたらいいのに。

そうしたらずっと、黒子っちの綺麗な横顔をずっと眺めていれて、ずっと隣に座っていられるのに。



「おーい!そこの2人花火すんぞー!」

「はーいっス!…花火なんて買ってきてたんスか」

「そういえば青峰君達がいいものを買ってきたって言ってた気がします」



「赤司君が買ったんでしょうね」と口元を緩めた黒子っちに、また見惚れてぼーっとして、「早くするのだよ」と私達を呼ぶ緑間っちの声でハッとする。



「行きましょうか」



立ちあがって私に手を差し伸べる黒子っち。ああ星が写りこんで、その光りで薄水色の髪がキラキラ揺れて。



「――はいっス」



ああ好きだなあって思いながら私は黒子っちの手をとった。




「懐かしいですね、花火の時青峰君が緑間君に向けて怒られてたのがちょっとおかしかったです」

「でも綺麗だったっスよねー花火も星も」

「そうですね。また星を見に行きたいです」



記憶を愛おしそうに思い返す黒子っちの瞳には見上げた灰色の空が写っていて。

そんな黒子っちの瞳も素敵だけど、やっぱり灰色じゃなく黄色をその瞳に映してほしいと思った。

だからバクバクとなる心臓の音を無視して、振り切って、寒そうに手袋の上から手を擦る黒子っちの左腕を軽く掴んで、彼の一歩前に踏み出して笑顔で振り返る。

大きく見開かれたその薄水色の瞳に、黄色が――私が写る。



「赤司っちに頼みに行こう?冬休み、みんなで集まって星見に行こうって!」



愛おしいよ、すごく。皆が離れたくないと思うくらい愛おしいよ。



「そう、ですね。頼んでみましょうか」



その笑顔も大好き、黒子っち。


さり気なく、手袋をはめていても冷たそうなその手を握り、私のコートの右ポケットに一緒に手を突っ込むとまた黄色が写る。

それが嬉しくて、私はまた黒子っちに意地悪をしてしまう。でも許して。もっと見てと願うことを許して。


私のポケットに一緒に突っ込んだ手を軽く握ると、ちょっと不服そうに頬を膨らました黒子っちの頬が少し赤くなる。



(もっと、もっと私を見て、黒子っち。)



光りだけじゃなくて、私を見て。その海のように綺麗な瞳で私を映して。



(大好き)






夏夜を彩る星の歌

  (握り返されたその手に、期待をしてもいいかな)



季節感が家出をしました。そろそろ付き合えバカップル
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