短編1

□求めるだけの愛ならば
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雨の音が耳に響いて、煩いはずなのにどこか心地よくて、私はそのまま雨に打たれていた

そんな中でも頭に浮かぶのは、命をあげても構わないと思ってしまうくらい大好きな彼の姿

大きい籠鳥の様な広い学園で唯一、心を許し愛した狂おしい程愛してる彼


彼の、棗の気持ちが私じゃない女の子に向いている事は薄々気づいていた

だけど、棗は私を気遣って別れようとしない。私が私が私が悪いの全部、全部、全部

ああ、だめだ。またこうやって自分を追い込んで独りよがりに酔いしれる。


それでも棗は一緒に居てくれた。


お皿を割っちゃってずっと「ごめんなさい、ごめんなさい」って謝ってた時、棗は私の頭を撫でて微笑んでくれた

好きよ。大好き。きっとおばあちゃんになってもずっとずっと大好きよ


いつの間にか私の足は棗に告白した大きな木の場所に向かっていて、自重気味に笑う

いいよね、今だけならいいよね


涙か雨かもわからないぐちゃぐちゃの顔で木にもたれかかり目を瞑る

まだ、鮮やかに蘇る楽しかったあの頃の記憶に感覚、今でもハッキリ思い出せる


「ごめんね」


あのね、棗。

大げさかもしれないけど、私にとって棗は神様みたいな存在でした。

この檻みたいな学園の中で力尽きるはずの私の前へ来てくれたのは棗

何もなかった私に「好き」っていう感情を教えてくれたのも、怖がられて誰も近づかない私を心配してくれたのも


こんな私を好きになってくれたのも


「――もう十分だよ」


ありがとう大好き大好きよ。だからもう私に縛られなくてもいいんだよ


空を仰ぎながら空に手を翳し、流れる涙を拭わずに私は微笑む







「さよなら」






「そういえば、お前の能力って…」

「い、言った事無かったけ?私の能力は――」




消失

 (人魚姫は泡になって消えて逝ったのです)

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