短編1

□願いごとひとつだけ
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※ 近親相姦ではないけれどほんの少し混じってる感じ




俺には2つ程度離れた姉がいる。勿論現在進行形で、だ。

そんな姉は俺と同じで昔から体が弱く、家に居る時間より病院に居る時間の方が長いと姉は言った

おまけに、目が見えないという障害付きで生まれてきた


でも姉はいつも笑っていた。


薫が俺や姉に自分だけ元気でごめんなさい、と泣き喚いていた時も姉は神の様な笑みを浮かべながら

「薫ちゃんは何も悪くないのよ」と優しく薫を慰めていたこともあった

どこか大人びた口調と笑顔で皆を慰める姉はまるで優しさで崇められる神のような存在


「あら、その空気は翔ちゃん?」

「………正解。流石姉ちゃんだな!」

「ふふ…最近忙しそうだから来てくれないかと思ってたの」


そんな姉を俺は尊敬していたし、誇りでもあった。それは今も昔も変わる事は無い。

ゆっくりと伸びてくる雪の様に白く綺麗な姉の手を、少し大きくなった自分の手で包みこみ小さく笑う

俺が笑った事に気付いた姉はより一層笑みを深め、甘えんぼさんねと言葉を紡いだ


どうして姉ちゃんがこんな目にあうんですか?


笑顔、という表情とは裏腹に心の中で真っ黒い感情を吐きとてつもなく嫌な事を考える


こんなにも優しい姉ちゃんがどうして…ずっと病院なんかに居なくちゃいけなんだよ

神様って奴はなんでもっと違う人を選ばなかったんだよ

運って奴はどうして姉ちゃんを選んだんだ、どうして俺じゃなくて…姉ちゃんだったんだよ


「翔ちゃん、どうしたの?…何か嫌な事でも、うわぁ!?本当にどうしたの翔ちゃん」


どうしようもなく不安に掛けられて、白いベットの上で座る姉に飛びつくように抱きついた

勿論、目が見えない姉は驚いて声を上げるけれど数秒もすれば俺の背中に手をまわして摩り

「大丈夫、大丈夫だよ」なんて優しく優しく声を掛けてくれた

それが嬉しい様でとてつもない焦燥感が自分を襲い、姉の存在を確認するようにより一層強く強く抱きしめる


なあ、神様。ひとつだけ弱い俺の願いを叶えてくれませんか?



願いごとひとつだけ

 (幸せになって欲しいと願うのは)(愚かなことですか)

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