キミがいた。

□25
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「お前、もう奴隷じゃねぇよ。」


「俺の傍にいろ=Bそれだけだ。」




「ヘヘッ、よろしくな!」




私を解放してくれたのも、
私を救ってくれたのも、
私を変えてくれたのも、

全部全部、あなただった。

ねぇ、ジュダル――…。





25 運命を恨め





「俺についてきてもらうか、らっ!!!」

「――ッ!」



いきなりの攻撃に、
なんとか防壁魔法で対応した。

大きな鎌を持った男――ヴァルカンは、
私と戦うつもりらしい。



「ジュダルがなかなかあんたを取りこまねーからぁー…」



…ジュダルが、私を組織に取り込もうとしていた?
今までの優しさも、もしかして…?

――そんなこと、ない。
ジュダルを信じないと。



「強ぇなぁー。その防壁魔法。」

「……。」


「無反応か。ま、いーけど…。」



ヴァルカンは、大きな鎌を振り回した。
それと同時に、炎も大きくなる。

これは、防壁魔法じゃ防ぎきれないか……。



「ハルハール・イアサール!!」

「…シャラール・ウォール」



私は水の壁をだし、
ヴァルカンの攻撃を防ごうとした。



「残念!その炎に水は効かねぇ!全部蒸発するぜ!?」

「…!!」


「アルシエルちゃん!!」



水の壁は、ヴァルカンが言ったように蒸発し、
火の龍が私の手に巻きついた。

少し手を動かせば、
火にあたって痛い。



「かかったなぁ…。これでもう魔法は発動できねぇだろ。」

「……。」









「煌帝国がこのシンドリアを滅ぼすのさ!!」


「どういうこと……?ジュダルちゃん………。」



ジュダルの高らかな声とは裏腹に
その言葉に反応したある人物の声は、
あきらかに不安と、動揺が混ざっていた。



「紅玉……。」



そこにいたのは、煌帝国第八皇女、練 紅玉。
そして、紅玉についている夏黄文たちにも、
シンドリアの兵士たちからキツイ視線が向けられた。



「聞いた通りさ!だから戻ってこいよ、俺が将軍にしてやる!」



ジュダルのその言葉は、
バルバッドでの失策で立場がなくなった、
武人として国のために戦いたかった紅玉にとっては、
嬉しいものだっただろう。

…そう、だった=B



「どうしたんだ?紅玉。」



現に紅玉は、
何も言えないでいた。

迷っていた。

想い人であるシンドバッドと敵にはなりたくないが、
煌帝国第八皇女という自分の立場もある。

選ぶに、選べないのだ。



「ま、いっか。…そうだシンドバッド。アルシエルはどうしたんだ?」

「…彼女は、今ここにはいない。」



シンドバッドの返答に、
ジュダルが一瞬、眉を顰めたのがわかった。



「じゃあ、どこにいんだよ。」

「…ザガン付近にいる。」



ジュダルの目からは、
なぜそんなところにいるんだ、と伝わってきた。



「…あとから現れた4人目の組織のものを追い払うためだ。」

「…組織、だと…?」



ジュダルの目に、
焦りが見えた気がした。

あきらかに動揺した様子に、
なにか不味かったか、と思ったが、
たしか先ほど、組織もアルシエルを求めていると、
ジュダルが言っていたことを思いだした。



「ちっ…!」



ジュダルは、一刻をも争うのか、
いつになく真剣な顔でその場を去っていった。








「ハッ…!哀れだな、マギ様もよ。」

「…?」



ヴァルカンは嘲笑うかのように、
ふよふよとアルシエルに近寄る。

彼も宙に浮いているのは、
全身魔装をしているからだろうか。


そんな考えが頭をよぎったが、
アルシエルはヴァルカンの言葉が気になった。



「どういう意味…?」

「信頼してたジュダルにも裏切られるとはなぁ…?」


「っ…!ジュダルは、裏切っていない…!!」



咄嗟に出た、否定の言葉をも、
ヴァルカンはアルシエルも高い身長で上から見下し、笑う。



「お前を堕転させて利用しようとしたのにか?」

「で、も…それは、本当かどうかは…。」



ダメだ。
これ以上聞いたらダメだ。

そんな警告が、アルシエルの頭にあった。
心臓の鼓動が異常にはやい。

それでも、ヴァルカンの言葉が頭に響く。



「お前は所詮、利用するためだけに煌に連れてこられたんだよ。」

「っ…!!」



耳元で、囁くように紡がれた言葉は、
今までのどんな言葉よりもはっきりと、
鮮明に頭に響いた。





「恨むなら、運命を恨め。」


――to be continued…





(目の中で羽ばたく闇は)
(彼のルフと同じ黒だった)

 

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