紅に溺れる青

□それでも、きっと
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昼休み。
屋上の、少し建てつけの悪い扉を開けると、
そこにはいつも、青がいる。



「青峰くーん。」



フェンスの傍で寝転がっている彼に、
いつものように呼びかける。

しかし返事がない。



「あれ…?」



おかしい。
いつもなら、名前を呼べば「へーい」とか、
「おー」とか、覇気のない返事が返ってくるのに。



「青峰く………寝てる。」



彼の傍まで歩みよれば、
彼は寝息を立てていた。

お弁当持ってきたのにな。
まぁいいか。
この様子だとどうせ5時限もサボるだろうし。





――俺に勝てるのは、俺だけだ――





元帝光中男子バスケットボール部、
キセキの世代≠フエース、青峰大輝。

彼と私は、この桐皇学園の入学式で会った。
たまたま席が隣で(彼は爆睡だったが)、
肌は黒いものの、綺麗な顔してるなぁ。

と思ったのを覚えている。


私と彼は何か縁でもあるのか、
クラスは同じ、席は彼の後ろだった。

男バスのマネは、中学時代からやっていたし、
高校もそうしようと決めていた。

そのせいもあってか、彼と私はすぐに意気投合し、一緒に帰ったりもした。



そんなある日、彼から中学時代の話をされた。

才能の開花、諦めていく相手。
気付いてしまった、現実。

彼が練習をさぼる理由も、いろいろ聞いた。


その話をしているときの彼はすごく悲しそうな顔をしていたけど、
それでもバスケをやめないのは、本当にバスケを好きなんだと思た。


でも、そんなことをみんなは知らない。
目つきが悪くて、髪が青くて、なぜか肌が黒くて、
ものすごく自己中な彼に、私とバスケ部以外の人たちは彼と距離を置いていた。

いやその才能も、バスケ部の中でも孤立していた。


ついには、なぜか最近私とも距離を取り始めた始末。
なぜだ。



「…ホント、バカ峰じゃん……。」

「誰がバカだって?」



ひとりごとのつもりでつぶやくと、
私ではない低い声が返ってきて、驚いて青峰を見た。

…みごとに覚醒している。



「なんだよ、バカって。」

「…別に。」



そのまんまだし。
私と距離置くし、勉強できないし、バスケバカだし。



「…今めちゃくちゃ失礼なこと考えただろ。」

「気のせいじゃない?じゃあ、私行くから。」



お弁当も届けたし、と言って立ち上がろうとすると、
地面についていた右手に束縛感。



「…なに。」

「行くな。」



寝転がったまま、私の右手首うをつかむ青峰。
それだけでも驚きなのに、
今のあの言葉は何…?



「今だけは、そばにいてくれ。」

「……やっぱりバカ。」



今だけは、ってなによ。




「ずっと、いてあげる。」

「…おー。」



覇気のない返事に、
青峰の顔を見てみると、耳まで赤かった。





それでもきっと
キミと過ごす時が、すきなんだろう
 

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