紅に溺れる青
□君の言葉全て
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※青峰とヒロインは付き合ってません
「天は人の上に人をつくらず…≠チていうじゃん?」
「え…あ、ああ。」
「絶対わかってないでしょ。」
8月31日。
この日は、バスケ部の練習があって、
大輝はサボってこの屋上に。
帰宅部の私は大輝に誘われて、
私服でこの屋上に。
夏だから暑い。
二人して寝っ転がって、
空を見ながら、思いついたことを言った。
「まぁいいや…。私、その言葉間違ってると思うんだよね。」
「…何が。」
「人を生むのは人≠ナしょ。天が上下つくるとかいう問題じゃないし。」
この世に神が本当にいるというのなら、
天が人をつくったというのなら、
人が一人以上存在する必要はないと思う。
そんなに上下つくりたくないのなら、
人をつくらなかったらいい。
それでも、人は人をつくる。
自分とは別の、
他人と想いあい、交わって、人を生んでいく。
「…私も大輝も、お母さんとお父さんのおかげで生まれてきたんだよね。」
「ヤってな。」
「死ね。」
何だこいつ。
そんなこと言うか。
さすがは万年発情期。
最低だ。
でも、そんな奴だと知っていて、
中学から一緒にいる私もおかしいか。
隣で寝転ぶ大輝を目をやると、
大輝も私を見て、
お互い見詰め合う形になった。
「大輝、生まれてきてくれてありがとう。」
大輝の青い瞳を見つめて、
自然に出てきた笑顔でそう告げた。
すると大輝は、
一瞬だけ目を見開いたけど、
すぐに戻って、今度はにやりと笑いだした。
「そーいうことか。」
「何が?」
大輝の言葉がよくわからない。
あなたは何を一人で納得していらっしゃるのでしょうか。
「は?今日が俺の誕生日だったからそんな話してさっきの言葉言ってくれてんじゃねーの?」
「えぇ!!?誕生日!?うっそ、知らなかった!!」
今度は私が目を見開く番だった。
まさかまさかまさか。
今日が大輝の誕生日だったとは。
「マジで知らなかったのかよ…。今年で4年目だぞ、一緒にいんの…。」
「で、でも…今まで誕生日のたの字も頭になかったじゃん、私ら。」
出会ってから今日まで、
私たちは誕生日なんてスルーしてきた。
だから今日まで知らなかったのだ。
「あー、もう!じゃあ教えといてよね!プレゼントないじゃん!!」
「俺、欲しいプレゼントある。」
「え、なに!?」
とりあえず、
今日の帰りに買うとして。
男の子にプレゼントとか、
小学校以来だから何を上げたらいいかわからない。
だから本人の欲しいものを聞く。
それで買う。渡す。
「んー?それはなぁ…。」
身を乗り出して聞いた私に、
大輝は色っぽい笑みを見せてきた。
途端、私の世界が反転した。
今目の前には、
青い澄んだ空を背にした大輝だけ。
――私はいま、大輝に組み敷かれてんだ。
そう自覚した時には、
大輝は目を閉じて、
私に顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっとまっ…!!」
〜♪
タイミングよく(?)、
私の携帯が鳴った。
大輝は、「無視しろ」とでも言いたげな顔をしてきたが、
それは相手にも悪いし私にも悪いので無視して電話に出た。
『もしもし妃っちっスか!?』
「も、もしもし、涼太。」
電話に出た途端、
大きな声で海常高校の涼太が話してきた。
…そもそも、
私の携帯なんだから私が出るに決まってるでしょ。
「…うん、うんわかった。じゃああとでね。」
「黄瀬の奴、なんだって?」
「大輝のためにキセキとさつきと火神で食べにいこ―。だって。」
いわゆるバースデーパーティ。
大輝の顔を見ると、
嬉しそうにしていた。
「しょーがねぇ。行くか。」
「部活ももう終わってるしね。今からだって。」
私たちは、屋上を出てお店を目指そうと歩く。
「ねぇ、大輝。」
「んだよ。」
「誕生日、おめでとう。」
君の言葉全て
俺の胸に深く刻む
(あ、さっきのプレゼント、あとでちゃんともらうから。)
(えぇ!?)