太陽の花
□心の中の君
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君に会いたくなって、戻ってきた思い出の場所。いつまでも、変わらない風景を懐かしく、嬉しく思いながらも辺りに目を凝らすと・・・
そこには、雨空を見つめながら、声を押し殺して泣いている君の姿があった。
―――今思えば、君の姿を見たのはあれで最後だった。
もう、その綺麗な瞳に自分が映ることはなかった。
せめて、最後に自分を見てほしかったな、なんて今だから言える話。
でも、願いは叶わず、自分を見てくれる前に風のように去ってしまった。
居なくなったんだ。僕の前からも、
この思い出の場所からも。
思いに耽っていると、雲の唸る声がしてきた。気がついて、空を仰ぎ見ると・・・・・・
小雨が降ってきた。
雨か・・・
そういえば、あの人は雨が嫌いだった。
だから、雨空を見つめて泣いていたのかな?
「雨の日は、自分が弱くなる」
いつか、そう言っていた気がした。
普段は無理して頑張っていたのかな?
それなら、その人が唯一、弱くなれるときだと思えばいい。
雨と一緒に泣けばいい。
我慢しなくてよかったんだよ?
何を我慢していたの?
その人のことになると、たくさん思いが駆け巡った。だけど、どれもその人の前になると言えなくて。
もどかしかった。こんなに勇気のない自分を酷く恨んだ。
でも、恨んだって何も変わらない。
あの人が戻ってくる訳でもない。
ましてや、そんなにすぐ自分を変えられやしない。
だけど、何かしたかったのは確かだった。
その人のためだったら、
少しでも力になれるんだったら、何だってしたかった。
だけど、最後に自分はあの人に何が出来たのだろう?
何より、何も出来ずにいた自分に腹が立った。
後悔していたから。
後悔していたからかもしれない。
時が流れるのを早く感じた。
しかし、どんなに時が経っても、今でも心の中に空いた穴は塞がらない。
人間によって、空けられた大きな穴。そして、また人間によって埋められる穴。そんな心の穴。
でも、この穴が埋められる人間はあの人しかいないだろう。
あの人がいない今、あの人以外にこの穴が埋められる人なんているのかな?
いつになったら、この心の穴がなくなるの?穴は、ただひたすら心に冷たい風を送っている。
「・・・心が冷えちゃうよ」
あぁ、あの人の声が聞こえた気がする。あの人の声を思い出したとき、自然と頬が緩んだ。
確かに、このままでは心が冷えてしまう。だったら、暖めてよ。戻ってきてよ。もう一度、隣で笑って。
また、こういうことばかり考えてしまう。
きっと、この冷たい風は、止むことを知らない。
永遠に吹き続けるんだ。
自分と君との間を。