novel
□君と踊る@
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ついさっき僕らは大好きな大好きな両親を交通事故で亡くした。
でも涙は出ない…。
ただもう動かなくなった両親をじっと見つめるしかなかった…。
どちらともなくぎゅっと手をつなぐ。
残されたのは、17歳の双子と、
目を疑うような桁をした借金だけだった…。
【君と踊る】
「カガリ…
僕たちこれからどうなっちゃうんだろ…。」
口を開いたのはキラだった。
アメジスト色の瞳に茶色の髪…母親にだ。
「さぁな…。」
呆然と前を向いたままカガリが答えた。
琥珀の瞳に眩しい金の髪…父親譲りだ。
お互い何も言葉を交わさず、突っ立ったままどれだけ時間がたったろうか…。
気がつけば陽は沈み、あたりは薄暗くなっていた。
ぐぅ〜
2人同時におなかが鳴り初めて顔を合わせた。
言葉は交わさなくても大体相手が何を考えているか分かる。多分それは双子にしか分からないもの。
突然の両親の他界に悲しくない筈がない。
しかし父が友人の借金の保証人になっていて…あまりの桁の大きさにどれだけの大金なのか、想像力さえ破壊されていた。
親類はひとりとしていない。
葬儀の手立てさえなにも分からない。
妙に冷静に考える自分達がなんだかおかしい。
「カガリ…まさか、キャバ嬢になって稼ごうだなんて思ってないよね?」
「キラこそ…ホストになろうだなんて思ってないよな?」
「まさかぁ〜☆」
だよなぁ☆
2人顔を合わせて微笑んだけれど、ため息がでた。
お互い図星だった。
高校生が健気にバイトで返そう!なんてお話にならない…。
「カガリじゃ、酔っ払ってセクハラしてきたおじさん殴ってさ、すぐクビになるよ。」
「キラだってすぎにへまやらかして追い出されるさ!」
「「……。」」
お互い反論できなかった。まさにその通りだから。
例えNO1になったとしても、とうてい払いきれないだろう。
「宝くじの一等、何回当たればいいかな……。」
「私に聞くな!計算苦手なんだから。」
それからは何も話さなかった。
何も考えなきゃ悩まなくていい…。
でも、無理だった。
溢れ出した思い出。
大好きな両親の事を忘れないためにも、生きなければいけない。
2人腫れた目をこすって、もう一度しっかりと手をつないだ。