夢小説
□なんで君を愛してしまったんだろう…
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ほんのり色をつけた桜の花びらが舞い散る季節……
まだ少し肌寒い風が頬を掠める…
縁側に腰掛け、澄み切った空に流れる雲を見渡し出会った頃を思い出す。
「………変わらねぇと思ってたのに、お互いに変わっちまったねぃ…」
その声は風に乗って消えてしまうほどの小さな声で呟く。
お馴染みのアイマスクをしてゴロンと寝転がる。
「……総悟……ここにいたのか…」
頭の上から聞き慣れた声がふってくる。
チッ!!!今一番会いたくねぇ奴が来やがった……
「……総悟…あいつの側にいてやんないのか?あいつ探してたぞ??」
ずっと側にいてやりたかったのに…その居場所をとったのはあんたじゃねぇですかぃ……
自分を探してるという言葉に心の中で毒づく。
ーーー
隊長どこに行っちゃったのかなぁ…椿さんが探してるのに〜〜……いつもならサボってる所はわかるのにこーゆー時だけ姿が見えないんだよなぁ…あとで副長に怒られるのは俺なんだけど……
いつも見える沖田の姿が見えないことに苛々しながらも姿を探す。
「あっ!!!!隊長…………!!!」
廊下を曲がった廊下の先に寝転がる沖田の姿を発見して声をかけようとしたが、その横に立つもう一人の姿にそつと曲がり角に身を隠す。
ん??あれは副長??
何やら話をしている二人の姿に耳を澄ませた……。
「………うるさくて寝られやしねぇや…」
アイマスクをクイッと上げて体を起こし気だるそうに縁側に座り、再び空を見上げると薄い雲に隠れていた太陽が顔を出し、自身を照らす光に眩しさから手を額に当て陰を作る。
空が……雲が綺麗ですねぃ………
「…………何考えてたんだ?」
後ろに立つ土方からふと漏らされる。
「………べつに。特に何も考えてやせん」
縁側から腰を上げ庭先まで歩き、ひらひらとどこからか舞落ちてくる桜の花びらを手のひらに受け止める…。
その後ろ姿はなんだか寂しそうに土方の目には映った。
ーーー
武州にいた頃から椿と総悟は一緒だった。
側にいるのが当たり前だった。
道場で稽古をしている時も椿は必ずその稽古を笑顔で見つめていた。
総悟が悪戯をすれば説教をするのは決まって椿だった。
まるで本当の兄妹のようで内心少し羨ましかった…。
自分たちが江戸に上京する時に椿は武州に残った……。
それから悲劇が起こった………
「土方さーん………」
昔を思い返していると間の抜けた声で呼ばれる。
「………なんだ??」
今だ背中を向けたままの総悟に答える。
「…………椿泣かせたら承知しやせん。あいつは……椿はもう十分涙を流したんでさぁ〜だから………だから……もしも…また涙を流すようなことがあったら………その時は今度こそ土方さんを抹殺します」
発せられた言葉の最後は声が震えていたように聞こえた…。
「…………あぁ…約束するよ」
そんな総悟の言葉に力強く答えた。
「……椿との出会いは今もこれからも忘れやせん……」
手のひらから風に再び舞い戻る桜の花びらを目で追いながら語り出す…。