夢小説

□なんで君を愛してしまったんだろう…
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『そーちゃん!!!!』

晴れ渡る空に響き渡る明るい可愛らしい声。
パタパタと走り寄ってくる姿に思わず頬が緩むがすぐにいつものポーカーフェイスに戻す。

「……なんでぃ」


ーーこの時総悟・椿14歳ーー


『道場の近くにあるお寺の桜がねとっても綺麗なんですって、あとで一緒に行ってみない??』

腕をくいくいと引っ張りながら目を輝かして話す。

「いいですぜぃ…」

『今日もお稽古???』

手に持つ竹刀を見つめながら言う椿に軽く竹刀を片手で振るう。

「そうでさぁ〜来ますかい??」
『もちろん!!!!』

嬉しそうに笑う椿の手を引き道場へと向かう。
道場に向かう最中、小さい頃の記憶が甦った。



ーー

椿との出会いは、稽古をしている道場で稽古を覗き見ていた椿を近藤が連れて来たことがきっかけだった。
近藤に連れて来られた椿を見た時、一瞬時が止まってしまったように動けなかった……。
大きな瞳に漆黒の髪、白い肌、紅い唇をした誰もが可愛いというであろう女の子だった。
椿とは同じ歳ということもあってすぐに仲良くなった。
聞けば良家の娘らしく、丁寧な言葉遣いにおしとやかな物腰に納得した。

仲良くなった俺たちはよく椿の屋敷でも遊んでいた。
初めて椿の両親に会った時に、なぜあんなにも明るく優しく育ってきたのか幼いながらにすぐわかった。
優しく威厳のある父親に、美人で笑顔が綺麗な母親。
椿が可愛いのは母親譲りなんだと思った。

両親を早くに亡くした総悟にとって、自分を実の息子のように接してくれることが嬉しくて、椿の両親にとても懐いていた。

屋敷の中庭に大きな桜の木が一本立っていて、そこの下でよく2人で鬼ごっこをした。



ーーー

「次は椿が鬼だぃ!!」

走り出す総悟を慌てて追いかける椿。

『待ってーーーーー!!!!』


ーーこの時総悟・椿10歳ーー


『…………きゃっ!!!!』


ーードサッ!!


石に躓いた椿は転んでしまい泣き出す。

『う…うわーーーん!!!!』

突然泣き声がして振り向くと地面に倒れながら泣いている椿が見えて、慌てて駆け寄ると転んだ時の衝撃で受けたのか手の平が擦り剥け、血が滲んでいた。

『うわぁぁーーーん!!!!痛いよーー!!!!』

それを見て更に泣き出す椿に思わず焦る総悟。

「……あ!!!」

思い出したように懐からハンカチを取り出し、それを二つに裂き椿の手の平に巻いていく。

『…………??』

不思議そうにハンカチに巻かれた手の平を見つめ、ゆっくり顔を上げると総悟と目が合う。

「……これで大丈夫でぃ」

その瞳に優しく微笑み返す。

『うん!!!!そーちゃんありがとう!!!!』

さっきまで泣いていた顔が嘘のように明るい顔で笑う椿に苦笑してしまう。


ーーブワァ

その時、強い風が吹き2人を風が包む…。

『わぁ〜……』
「すごいねぃ………」

突然舞い起きた風が桜の木を覆い、枝を揺らしたくさんの桜の花びらが宙を舞う。
その光景に目が離せず感嘆の声を漏らした。

『すごーーーーい!!!』

そんな静寂を先に破り、はしゃぎながら宙を舞う桜の中へ駆け出す。

『そーちゃん!!!!綺麗だね!!』

桜の花びらが舞う中で綺麗な笑顔を向ける椿はとても美しかった。

「………椿、その着物よく似合いやす」

桜に似た花が描かれた真紅の着物は、白い肌をする椿にとっても似合っていて、すぐ横にそびえ立つ桜の木よりも美しく印象に残った。

『ん??これ???これは、ライラックっていうお花なんだって…お母様がお父様に嫁がれる時にお祖母様がお母様にこの花が描かれた箪笥を贈られたんですって…』

自分が身に纏う着物を少し持ち上げ見ながら話す。

「そうなんですかぃ……椿はその着物が一番よく似合ってやす」

『………本当?私はそーちゃんがそう言ってくれるのが一番嬉しい!!!!』

桜の花びらが舞う中で恥ずかしそうにはにかむ椿はまるで天女のようだった……。
そんな椿に自分自身の顔も赤く熱くなるのがわかった。
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