世界一初恋
□聞きたい言葉
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(注意)2人は付き合ってる前提です!
頑なに自分の気持ちを認めようとしなかった小野寺から『好き』の二文字をもらい再び付き合うことになった俺たち。
お前遅ぇよ、とも思ったがそれはまぁいい。
そんなことよりもだ。
それ以来俺はこいつから好きと言われていない。
片想いから恋人へと変わっただけでも十分喜ばしいことだとは思う。
それでも、好きならば好き、と言って欲しいのだ。
というわけで、俺はちょうど本を読み終えたらしい律と向かい合った。
「なぁ、律」
「なんですか?」
「お前本当に本好きだよなぁ」
「……それは今に始まったことではないですが」
「他にねーの、好きなこと?」
「これと言って思いつかないです」
「……そっか」
「あぁ、でも……」
いったん言葉を切り、そらされる視線。
心なしか赤い顔になんだ、と思えば。
「……高野さんの隣に居られるこの時間は好きですよ…………」
小さな声で独り言のように呟かれたそれを、俺の耳はひとつ残らず全部拾う。
正直、すげー嬉しい。
けど、もう少し。
「それだけ?」
「え?」
「俺と過ごす時間だけが好きなの?」
俺の言わんとすることを読み取ったのか、真っ赤な顔で高野さん、ずるいですと吠え始める。
「聞きたい。律から……。」
これでダメならどうしようか、と考え始めた頃。
立った、と思えば俺の背中に抱きついてきた律に、正直驚いて声が出なかった。
俺の気持ちを知ってか知らずか、耳元でそっと囁かれる。
「……高野さんも、好きですよ」
たった一言。
律がくれるその言葉だけで幸せを感じてしまう。
それくらいに俺はこいつのことが大切なのだ、と改めて愛しく思う。
遠慮がちに回された手にそっと触れる。
照れ隠しか、きゅ、と俺の服を握る律があまりにも可愛すぎてそのまま押し倒してしまったのは言うまでもない。
end