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□素直になれない。
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「高野さんっ!?高野さん!どうしたんですか!開けてくださいっ!!」
いくらドアを叩いて、叫んで呼び掛けてみても高野さんは出てくるどころか、気配すら全く無かった。
…………………………
その日は周期開けの休日で、疲れが溜まっていた小野寺は前日玄関で卒倒して眠ったままで二度寝をしていた。
あーあ、ベッドの上の洗濯物をどけるとか、汚れた食器を洗うとか、掃除機をかけるとか、やらなきゃいけない事が沢山あるのに…………とは思うものの、体は素直に休息を欲していて、腕一本動かすのも億劫だった。
そのまま微睡んで、夢を見始めていた時…………―――――。
ガタンッ!!!
「………っ!?えっ!?何!!?」
突然の大きな物音に、さすがの小野寺も飛び起きて辺りをきょろきょろと見渡す。
(………………。何も………ない、よな………?)
「今の音って………もしかして夢…………?」
なわけないか、と自嘲してもう一度寝ようかと思ったとき、ふと隣の住人の顔が頭をよぎった。
「まさか、高野さん………?」
あり得ないだろと口でなら言えるのに、何故か心がざわついて落ち着かない。
(………………………………………)
「……………………。………………あぁもう!確認しないと何にもならないだろ!」
さっきまで怠かったはずの体も、今なら動かせると思った。
前のめりでつまずくようにして高野の部屋の前まで来て、小野寺はまずインターフォンを押してみる。
「………高野さん、あの、いますか?さっきものすごい音がしたと思うんですけど………」
しばらく待ってみても何の応答も無い。
時計を見たわけじゃないから正確には分からないけれど、今はもう昼前だろう。いつも高野さんは朝早くに起きて、朝食をとったり家事をしているから、まだ寝ているなんて事はあり得ないはずなのに…………。
(出かけているのか………?……だって、いたら返事するはずだよな…?)
相変わらず静かなままで過ぎていく時に、徐々に小野寺の焦りが増す。
「高野さんっ!?高野さん!どうしたんですか!開けてくださいっ!!」
ドンドンと叩き続ける小野寺の両手が痛みを訴えてきても、手を止めることはできなかった。
…………止めてはならない、そんな気がした。
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