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□好き、嫌い…好き
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好き、嫌い……好き。



自分の中で鬩ぎあっている相反するふたつの気持ち。

好きなのか、と聞かれれば好きじゃないと言ってしまう自分。
それでも『嫌い』と言い切ってしまうことができないのは、それがどんなに否定してもしきれない俺の気持ちだからだろう。


あの時ー10年前のあの別れは(勘違いとはいえ)俺の心に深い傷を残した。
そのせいか、今でも高野さんの前では素直になれない。
わかってはいるのだ。それは単なる俺の我儘なんだと。臆病な俺の言い訳なんだと。


『もう一度好きと言わせてやる』


そう宣言されてから何日が経ったのだろうか。
高野さんは相変わらず俺にちょっかいを出してくるし、毎日のように部屋に連れ込もうとする。否、あの手この手で連れ込まれている。今日だって例外ではなく、高野さんの隣で悶々としている。

ぐるぐると考え込んでしまうのは俺の悪い癖。だけど…
本気でどうしていいのかわからない。
そもそも、俺はどうしたいんだろう。
この気持ちを受け止めて高野さんに言うのか?そんなの無理だ。そんなこと……俺に出来るわけがない。

あぁ、いっそのこと全て吐きだして、そうしたらこんなに悩まなくてもいいのかな。
だけどそれは、この壁を、唯一の鎧を自ら壊すことを意味していて。

怖い、怖いよ高野さん。
何が、なんてわからないけど、もう俺の心は容量オーバーで…。


「律…?」


何時の間に読み終えたのだろう。本を読んでたはずの高野さんが心配そうに顔を覗きこんできた。


……本当はわかっているんだ。どうしたいか、なんて。
けれど、この距離を壊したらこの関係は今度こそ修復不可能なものになるんじゃないかって。そんな思いが心の奥底で燻っているから。


「どうした?」

「なんでもないです」

「じゃあ、なんで泣いてんの」

「……っ」


泣いているなんて、気づいてなかったしこの人には気づかれたくなかった。


「……お前が何を考えてんのかとか全然わかんねーけどさ、それは俺には言えないことか?俺は、知りたい。好きなやつが泣いてたら慰めてやりたいし、悩んでるなら一緒に悩みたい」






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