世界一初恋
□甘い罠
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10月31日。
巷では仮装した子供たちがお菓子をねだる日である。
…否、巷だけではなかった。
「律っちゃーん!Happy Halloween! Trick or Treat〜っ!!」
「はい、どうぞ。」
「え〜!律っちゃん持ってたの!?残念〜悪戯したかったのにぃ〜…」
「え…?木佐さん……?ってゆーか離れてもらえませんか?」
さっきから高野さんの視線が痛いんです、と耳打ちする小野寺と一気に青くなる木佐。
「木佐!お前仕事倍な。」
「え゛〜!!すんませんすんませんっ!俺が悪かったですぅ〜!お願いですからそれだけはご勘弁を〜!……うぅ…」
……エメラルド編集部は今日も平和である。
プルルルル…
「はい。丸川書店の羽鳥です。」
「あ、トリ?頼まれてたハロウィン特集の付録のカットが出来たんだけど…あ、あとプロットも見てもらえたらなーって」
…は?
プロットって次の??
デッド入稿常習犯のこいつがもう次に取り掛かっている…?
おかしい。絶対におかしい。
何か企んでいるのか…
「わかった。今からそっちに行く。」
一旦電話を切り、高野さんに声をかける。
「付録のカットが出来たみたいなんで吉川千春の家に行ってきます。」
「羽鳥。今日そのまま直帰でいいから。」
「え?付録のカットは?」
「あ〜それは明日の朝イチに俺のところに持ってきたらいい。」
ちょいちょいと手招きをされ、素直に従うと。
「今月は吉川先生が珍しく1番に原稿あげたんだから、褒めてやれ。…あと、たまには優しくしてやれよ?こないだ先生に会ったとき腰痛そうだったぞ(ニヤリ)?」
耳元で言われた言葉に絶句する。
「………わかりました。」
逃げるが勝ち。
そう判断した俺はエメラルド編集部を後にした。
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