世界一初恋

□ずっと一緒に
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「ただいま〜…ってぅわっ」

「お帰りなさい!」

扉を開けると雪名が飛びついてきた。

…こいつは犬か?

しっぽと垂れた耳が見えそうな勢いに思わずそんなことを考える。


相変わらず雪名はお泊まり会と称してうちにきていて…

つーかもはや同棲だろ…



「あれ?木佐さん、その紙袋どうしたんっすか?」

「え?あぁ…えっと、その…」
「あっ!もしかして、バレンタインのチョコとかですか!?」


う゛…何でこう、無駄に鋭いんだ?
でも隠しても無駄…だよな?


「うん。会社の子から…」

「へぇー…木佐さんて、やっぱモテるんですね」

「ごめん。俺、全部断ろうとしたんだけど…」

こういうの嫌だよな、と小さく呟く。


「何でです?」


予想してたのと掛け離れた返事に、拍子抜けしてしまう。

「いや、だって、その…俺、お前と付き合ってるんだし…」

「…俺、確かに独占欲は強いと思いますけど、そんなこと気にするほど狭量じゃないですよ」

それに、と言葉が続けられる。

「俺、木佐さんに世界一好かれている自信はありますから!」


なんつーかこいつ…やっぱ変??

つーか普通ヤキモチのひとつくらいあってもいいものを…

例のキラキラオーラを纏いながらニコニコと笑う雪名に、複雑な気持ちになる。


「そーだ木佐さん!こっち来て下さい」

「え?」


訳も解らないまま腕を引っ張られリビングに引きずられる。


「手出してもらえます?」

「え?あぁ」


差し出した手の平に置かれたのは綺麗にラッピングされた小さな箱。


「俺のチョコ、受けとってくれます?」

「え…これ、お前が作ったの?」

「はい。買ってもよかったんですけど、恋人に渡すならやっぱ手作りでしょ?」


ラッピングも頑張ったんですよ〜、と茶目っ気たっぷりな笑顔を放ってくる。


いきなりのことで、思考が追いつかない。


どうしよう…俺今超嬉しい…


「…さっきはああ言いましたけど本当は俺、少し嫉妬してました。俺が1番に渡したかったなぁ〜って」

「え?だって、お前…」


雪名が珍しく顔を赤くしている様子に驚きつつも高鳴る鼓動を感じ胸に手を当てる。


「俺今めっちゃ恥ずかしいっす…」


言うんじゃなかったと目を覆う手をそっと取る。

…いつかされたように、薬指にキスをひとつ贈る。


「…俺、本命は全部断ったから…」


だから、


「そういう意味では雪名が1番で…あ、でも俺、お前以外から貰う気なかったから…あれだって一種の行事みたいなもんで…」

毎年のことだし…


「でも、本当にお前から貰えるとは思ってなかったかも」

くすり、と笑う気配がする。

「嬉しいです」

「え?」

「木佐さんが俺以外のチョコを断ろうとしたことが嬉しいです。」

「そんなの…普通じゃん」

雪名の目が細くなる。


「木佐さん、好き」

「俺も」

「俺、これから先もずっと木佐さんと一緒にいたい…駄目ですか?」

「駄目なわけ、ないじゃん…」

俺だって雪名と一緒にいたい。
優しく抱きしめる雪名に身をまかせていると顔中に降ってくるキスの嵐。
まるで宝物を慈しむかのように優しく触れてくる雪名に、心の奥まで溶かされてしまう。


―こうやって、雪名とふたりでずっと甘い思い出を作っていきたいと思ったのは俺だけの秘密。






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