過去拍手文

□夢
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トリチアの場合


『だったら会いに来て』




修羅場明け。
お約束のデッド入稿を果たし、屍と化した吉野千秋はふらつきながらベッドへと倒れ込んだ。


「ん〜…トリあったかい……」



もぞもぞと、身体を寄せてくる吉野に鼓動が高鳴る。



「そんな薄着してるからだろ。てかお前裏表逆だぞ」

「あ…ホントだ」


まったく、お前ってやつは。
これだからほっとけないんだよな。



「んー…でもめんどくさいしこのままでいいや」


「……お前解ってるのか」

「何が?」

「寝間着を裏表逆に着る意味」



そう、それは―…





好きな人に夢の中で会いたいってことだ。





わざと耳元で囁けば、こいつはすぐ真っ赤になって。


「お前がそんなに俺に会いたがってくれてたなんてな」

「ちちち、違っ…」



反論は甘い甘いキスで閉じ込める。



「何が違うんだ?」

「……トリの意地悪」


拗ねてそっぽを向いたって俺にとっては可愛いだけなのだが。
そんなことも解ってないんだろな。



「でも俺、夢でトリを見たことないかも」



小さく紡がれた言葉。



「お前の俺に対する気持ちはそれだけってことか」

「別にそんなの関係ないだろ……あ、だったらトリが会いに来てよ」

「…千秋が待っててくれるなら行ってやる」

「なっ///」






そんなに会いたいなら会いに行ってやる




だから、今はお休み−…








(なぁ、結局トリ出てこなかったんだけど)
(…俺は千秋と会ったが?)
(…………鳥は出てきたけどトリに会いたかった)
(お前、誘ってるのか…?)
(なっ///別にそんなつもりは…ひゃっ!?)
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