過去拍手文
□似たもの同士
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今年ももう12月。
昔でいうところの、師走。
授業以外に特に仕事のないヒロさんとは逆に俺は毎日仕事に呼び出されている。
「ヒロさん、ただいま…」
「おかえり。晩飯作っといたが先に風呂入るか?」
「んー…ヒロさんで「飯と風呂、どっちだ」
「………じゃあ先に風呂入ってきます」
「おぅ。ゆっくり入れよ」
最近、ずっとこんな感じで。
俺としては普段なかなか会えない分こうやって会えた時は恋人らしくいちゃいちゃしたいのですが……。
毎回あの手この手で拒まれる。
ヒロさんがすることだから、きっと何か訳があるのだろうけど、それがわからない。
「でも、案外ベッドではおとなしいし……」
一体、なんなんだろう。
***
色々考えてたらいつもより長風呂してしまった。
慌てて上がりリビングまでいくと、テーブルの上には湯気をたてている鍋がひとつ。
「風呂、ありがとうございました」
「ん。長かったな」
「あ、ちょっと考え事してたら時間忘れちゃってて」
「野分でも考え事とかするんだな」
「……俺にだって悩みはありますよ」
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでもないです。それより今日の晩飯は何ですか?」
「寒いからおでんにしてみた。胃にも優しいだろ?」
「おでんとか久しぶりですね。美味しそう」
椅子に座り、早速箸を運ぶ。
「味はどうだ?薄くないか?」
「大丈夫ですよ。出汁が効いてて凄く美味しいですっ」
「……そうか」
心なしかヒロさんの顔が赤い気がするのは俺の気のせい?
「ヒロさん、どうかしました?」
顔、赤いですよ、と指摘すればビクリと震える肩。
「いや、その……っ」
「?」
チラチラと視線を外しながら、小さく呟かれた言葉。
「ずっとお前とこうやって一緒に何かをしたかった……から、なんか嬉しいってか……」
「俺もこうやってヒロさんとひとつの鍋をつつける時間は幸せで……ってえ?ヒロさん今なんて…?」
俺の聞き間違い…じゃないよね。
……でも、そう思ってたならなぜ。
「ななななんでもないっ!」
「ねぇ、ヒロさん。なんでもなくはないでしょ?」
箸を握る腕を引き寄せーー
我慢しきれなかった俺はそのままめくるめく官能の世界に身を投じた。
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