たんぺん

□キミがいるだけで
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“またすぐ帰ってくるから”


その言葉と信じたあの日の冬

けれどキミは帰ってはこなかった

なぜ?

ずっと待っていたのに…

キミをずっと待っていたのに


 『ハァ…』


忘れたくても頭から離れてくれない


士「また思い出してたの?アツヤの事…」

 『士郎…うん。もう4年になるね……』

士「そうだね…」

 『もう、帰ってこないんだよね?』

士「ミラ…ごめん……」


士郎は何か申し訳なさそうに言う

彼が謝っている理由は多分あの日の事…

自分だけ生き残ってしまった罪悪感

こんなことを言って士郎を困らせたいわけじゃない


 『士郎のせいじゃないんだよ。誰のせいでも…』


アツヤ…

アツヤ…

なんでいなくなってしまったの?

毎日毎日泣いてキミを思い出すだけの日々

悲しくてさみしくて何も出来なくて


 「泣くな…ミラ泣くな…」


懐かしい…この声

でも目の前にいるのは士郎

けれどしゃべってるのも士郎

じゃあこの声は何?

 
 「俺だよ…アツヤ…」

 『なんで?アツヤはいないんだよ。士郎、冗談はやめて』

 「冗談なんかじゃない。俺はアツヤなんだ」


信じられない

アツヤがここにいるなんて…

 
 『士郎は…?』

 「兄ちゃんはここにいる」

と言って自分の胸をさす

 「今は眠ってもらってる。ミラに呼ばれているような気がしてな」


本当にアツヤなんだ…

 『アツヤ…!』

私は無我夢中でアツヤに抱きついた

 『会いたかった…』

 「俺も…会いたかった」

 

奇跡が起きたんだ

起きるはずのない奇跡が…

でも私はそんなことどうでもいい

今、目の前にいるのはまぎれもなくアツヤなんだ

それ以外の何物でもない

それでいいじゃないか


 『アツヤ…お帰り』


それがたとえ一人の人間を犠牲にしたとしてもいい

アツヤさえがいてくれば私は何もいらない





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