Novel
□Laugh Maker
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部屋に籠りっきり。
部屋に響く泣き声。
その泣き声の主、レノ
酷く落ち込んで、珍しく泣いていた。
そんな部屋に飛び込んだ小さなノックの音。
誰だ、こんな時に来やがって。今は誰にも会えない顔なのに。
「どちら様ですか、と」
扉越しに問い掛ける。残念ながらこの家の扉には覗き穴がないので、泣きじゃくる声を抑えて扉の向こうの誰かに問い掛けた。
「俺、ザックス。レノが泣いてるってタークスのハゲがブツブツ言ってたから笑わせに来たんだ。とりあえず寒いから中に入れて欲しいなー…なんて…」
笑わせに来た?
冗談じゃない!!
そんなもの呼んだ覚えはないぞ、と
「俺に構わず帰ってくれよ、と」
アンタがそこに居たら泣けないだろ。
だから帰ってくれ。
覗き穴がないからザックスが立ち去ったかなんて分からない。
とりあえずレノは部屋に戻ってまた泣き出した。
暫くしてさっきと同じ、無機質な扉が叩かれる音。泣きながらそれに気付いたレノは半ば呆れた様にまた扉に近付いた
「このバカまだ居たのか。帰ってくれって言ったろ」
先程と同じ様に扉越しに話掛ける。
さっきまで明るかったザックスの声が暗くなった。きっと俯いて拗ねてるんだろうと予想できる
「そんな悲しい事レノに言われたの初めてだ…、すっげぇ…哀しくなって来た…、どうしよ…泣きそうだ…」
笑わせに来たくせに、冗談じゃないぞ、と。しかも人の家の前で大の男が泣いてるっておかしいだろ。
それにアンタが泣いてちゃしょうがない。泣きたいのは俺の方だ。一緒に泣いてくれなんて頼んでないぞ、と。
二人分の泣き声が響く
ザックスはとうとう泣き出した。つられて俺も泣いた。薄いドア一枚挟んで背中合わせ。しゃっくり混じりの泣き声。お互い膝を抱えて背中合わせ。すっかり泣き疲れたのにまだ泣き声が聞こえる。
「今でもっ…笑わせる…つもりか?」
しゃっくり混じり、ドア越しにザックスに問い掛けるとザックスが顔を上げたらしい音が聞こえる。
「レノが笑ってくれてるのが俺の生き甲斐なんだ、だからレノを笑わせなきゃ俺は帰れない」
ザックスの泣き声、なのに真剣で真摯な声に少しレノは微笑んで、心が揺らいで来た。しかしドアが開かない。外の荷物か何かが引っ掛かってるらしい。
「今では…アンタを部屋に入れてもいいって思った…。でも何かが引っ掛かって開けれないからそっちでドアを押してくれ。鍵なら……開けたから」
それを告げてもドアを押してくれない。俺が嫌になったのか?笑わせなきゃいけないんだろ?
「ザックス…?なんとか言ってくれよ、と…」