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□Snow kiss
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真冬。
ここ3日間雪は降り続いた。
シシ神との戦いはこの前の夏。タタラ場もあの事件からやっと落ち着き、アシタカもエボシの片腕となって日々再建のために働いた。
サンは、というと…
あまり前とは変わらず、兄弟と遊んだり獲物を捕まえたり…
アシタカとサンは時間を見つけては森で会っていた。
言葉通り、アシタカが常に会いに行っていた。





雪が深い…森がしん…としている。
あまり寒さが得意ではないサンは、毛皮を何枚も着込み洞窟で丸くなっていた。訪問者なんてほとんどない洞窟だが、
「サン…」
ふと、大好きな人の声がした。
アシタカ?
洞窟の入口に彼が立っていた。
久しぶりの再会だ
「こんな寒いのに、お前そんな薄着で森に入って来たのか?」サンが立ち上がりもせず、丸くなったまま、肩を震わせながら言う。
アシタカはニコっと笑って
「私は雪国育ちだからこんなのまだ寒く感じないんだよ」
「にしても、サンは随分と寒いみたいだな、大丈夫か?風邪など引いておらぬか?」
とサンに近づく。
「もー!大丈夫だって、アシタカはなんでもかんでも心配しすぎるんだから!」
未だに彼との至近距離に照れるサンは、彼の手を振り払おうとする。
が、しかし手を取られてしまい。
サンの手を握り
「こんなに冷たいじゃないか…」
そしてサンと見つめ合ったまま…そのまま頬を寄せ、肩に手を回し、サンを包み込む。
(もう…またこれかよ。)
サンは心臓がドクドク波打ち、頭が彼の事しか考えられなくなっているのを感じた。
(いつもこうなるんだ。それに最近こうゆうのが増えてきた…)
サンの髪を撫でながら
「すまない。もっと頻繁に会いに来たかったのだが。寂しかったか?」
とアシタカが寂しそうに聞いてきた。
「別に……アシタカは忙しいんだろ?仕方ないじゃないか。」といつも通りぶっきらぼうに答えるサン。
「ん…」
と彼は相槌をうつ。
「サン、体が冷たい。」とさらにきつくなった腕に
「んっ…アシタカ苦しいよ。」
と顔を上げた。

目が合ってしまった。
アシタカの真っ直ぐで澄んだ瞳がサンを覗く。
この瞳をみるといつも丸裸にされたような、なにも隠せないような不思議な気持ちになる。
そのまま、アシタカが首を傾け目をつむり、サンのくちびるに自分のを重ねて来た。
(あぁ、ダメだ…人間になってしまう。こんなの…)
サンは心にある罪の意識とは裏腹に、自分の体が彼を求めている事も感じてしまう。
アシタカはそんなサンの胸中すべて分かっている。
分かっているから切なくて、自分の物にしなくなる。
この人間と動物の間の女を…

サンのあごを引き寄せ、口を開けさせ、さらに深く口づける。
「んっ」
「はっ」
時折サンから漏れる声が心地好い。
もう口づけだけでは満足出来なくなったころ
「サン、少しは暖かくなったか?」
と突然やめてしまった。
「ぅん」
サンは少し寂しそうな、物足りないような返事をする。


アシタカはまだしたいことは山ほどあった。
でもそれをいきなり彼女に全て押し付けてしまったら、きっと彼女は自分を恐がる…嫌う。
それが怖い。
そんな関係が何ヶ月も続いている。


帰るしたくを済ませて、もう1度サンを抱きしめる。また来るからね。と…

「今度は早くこいよ…」
とぽつりと呟く。

あぁ、なんて女らしくなったのだろう。
胸をときめかせながら、サンの頬に口づけしてアシタカが洞窟を後にした。

吹雪でアシタカが見えなくなるまで、洞窟にもたれかかりながらサンは彼の背中をずぅっと眺めていた。

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