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□思春期
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今日もアシタカとサンはお散歩。
前を歩くアシタカをみてサンは…



(初めて会った頃より背が伸びたし、体も大きくなったな。

それなのに私は全然力強くならないし、なんか胸はどんどん膨らんでくるし…)


アシタカは自分とどんどん違う成長を遂げる。

そんな事を考え、ぼーっとアシタカの後をついて歩いていたら、距離が離れてしまった。

ふとアシタカが振り返り、
「すまない、歩くのが少し速かったか…?」
と足を止める。


「え………?」
すっかり離れてしまった距離に、サンは驚いた。

「そ…そんな訳がないだろ!この私が人間なんかに負けるなんてっ」

サンは信じられないと怒る。

「そうか。
そうだな……。」
とアシタカは微笑んでまた前を向いて歩く。

さっきよりゆっくり歩くアシタカに、小走りで追いつくと幸せそうな彼の顔………

「アシタカ、なに笑ってるんだ?」
とアシタカを見上げる。

「サンと一緒にいるのが幸せで仕方ないのだよ…」

サンに目線を合わせず、空をみて語る。

そしてまた歩きだすアシタカ。

サンはアシタカの言葉にしばしば固まってしまう。


幸せってなんだ…
私は怒っているのに、なんであいつは楽しそうなんだ……


サンは納得がいかないよう。

アシタカまで走り、腕を引っ張る。

「おい、アシタカ、馬鹿にしてるのか?」
と顔を覗き込む。

アシタカは軽く振り向き、サンの頭を撫でる。
「馬鹿になんかしてないよ。本当のこと言ったまでだから…」


「あー、もう!

ほらまた下にみて馬鹿にしてる」
サンは頭を撫でられるのが気に食わない。

「下に見てるんじゃないよ。ただサンの覗き込む顔が可愛かったから…
馬鹿になんてしないよ」

微笑みながらアシタカの黒い瞳がサンの緑色の瞳を見つめる。


(またこの目……まっすぐで、馬鹿みたく正直…
あと恥ずかしいこともぺらぺら話すこの口。

私はこれにいつも負けてしまう)

「分かった…
なんでもないよ……」
と大人しく撫でられるサン。


本当にこいつには勝てない…





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