挑戦ですなー…?

□政宗様の嫁取り5〜君の隣で眠らせて…〜
2ページ/91ページ

「政宗殿は…無事に甲斐にたどり着かれただろうか…」
秋の深まりを告げる高い空に、幸村は溜め息混じりに息を吐いた。
…普段が普段で、政宗殿の姿を見掛けるくらいはする。
ただ、声だけを聞く時も…ある。
奥州筆頭はいつも…"忙しい"…その政宗が、今は奥州を離れて、懐かしの甲斐の地に旅立ったのは、昨日の朝の事だ。
「おーい!嫁御!」
呼ばれた方向に目を凝らす。
…派手な着物に、高く結い上げた髪は…遠目でも誰かは一目瞭然だ。
「あ、幻武殿!」
鍬を片手に大きく手を振り回した。
「よ!精がでるなぁ。ちょっくら休憩しよや。」
政宗の専属のお匙の幻武は、某の事を[嫁御]と呼んで、政宗殿の身代わりのように細々と世話をしてくれる。
「井戸で手ぇ洗って来いよ〜。敷物準備しとく。」
「忝ない。」
ぺこりと頭を下げ、井戸のあるあたりまで引き返す。




「しっかし…あいつも"忙しい"男だよなぁ〜」
早速幻武の準備した敷物に座り、お茶を楽しむ。
「政宗殿の事で、御座るか?」
「それ以外に、"誰が"いるんだよ?」
幻武は愛用の長煙管を吹かし、ふぅ〜と煙を吐いた。
煙はすぐに空を昇り、薄く消えていく…その煙を何とはなしに眺める。
「政宗殿は…"お付き合い"をしている頃から、お忙しい方でしたからな。」
…これだけ…"忙しい"のに…よく甲斐に足を運べたものだと、<今>なら感心を通り越して"心配"してしまう。
「"忙しい"は"忙しい"…昔っからだ。だがな〜…嫁御の事、"構わなすぎ"じゃねぇ?」
「そうで…御座るか?」
幻武殿お手製の団子を頬張る。
「"釣った魚に…"なんとやら、だろ?」
煙管を片手に幻武殿は、つっかけてきた雪駄を組んだ足の指の先で…器用に揺らす。
「そういう訳では…政宗殿は…お忙しい方ですから…」
某が俯くと、
「甲斐には[通った]。」
幻武殿は、煙管を深々と吸う。
「こっちが![呆れる]くらいに…」
ぷはぁと煙を吐かれた。
「それは…そうで御座るが…」
そう…自分から[言い出した]事、今更…後悔したとて、仕様もない…
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ