真っ暗な闇の音(ゴーストハント)
□悪霊がいっぱい!?
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一瞬自分の中にいた黒田が口元を歪めたような気がしたのは気のせいなのだろうか。
「なんだ今の声は!?」
長髪の男の人が声を荒げながら問いかけると「松崎さんの声とちがうやろうか」との答え。その容姿とは違う関西弁に一瞬驚くけれどもう今更な気がして表情を消した。
ドアをノックするような音が聞こえて美少年が「あっちか」と呟くと同時に私は其処を走ってドアを掴んで引く。
――? 開かない?
何回か引こうとするけれど開かないそれに首を捻る。「貸してみろ」と美少年が言うけれどそれどころじゃない。
「蹴破ったほうが早いです」
私の声に男の人が前に出た。その様子に私が後ろに下がると「蹴破るぞ! どいてろ綾子」とあっち側に声をかける。
「勝手に呼び捨てにしないでよ!」
何て声が聞こえたけれど僅かな足音。後ろには下がったみたいだ。それと同時に一発で蹴り倒した長髪さんに恐れ入った。綾子さんはびっくりした顔をしている。
「――なんなのよ もうっ!」
缶を開ける音が聞こえてため息をつく。未成年の前で飲むなんてバカにも程があると言いたい気分である。
「…霊はいませんわ」
原さんの声が聞こえて私は視点を変える。まさか、なんて思ったけれど私はす、と手をあげた。
「原さんと同意見。霊なんかじゃない。此処に霊がいないのは本当なんだ。
――もしかしたら旧校舎の地形とか……黒田さんがポルターガイストを起こしているかも、な」
全員が一斉に私に視線を浴びせる。そういう視線は要らないんだけれど。私は更に口を開く。
「黒田さんは此処に幽霊がいると言って聞かない。ならば此処が無くなるのを恐れている幽霊だったりとか……はたまた彼女にPKがあるか」
前半はもちろん冗談である。頭を抱えた長髪さんを一瞥しつつ美少年に「なんて言うシナリオは如何だろうか」問いかけてみた。釘で遊びながら美少年はす、と目を細める。
「やってみる価値はありそうだがまだ確信はない。」
「ああ、完全に私の勘ですから気にしないでください」
また辺りをふらり、と見渡すとす、と壁に触れて透視する。視えたのは
少しずつ沈んでいくこの校舎。