儚い桜の音(薄桜鬼)
□赤毛の君
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嗚呼、やっぱり髪は紅いんだ。
赤茶なんて範囲じゃない。紅いんだ。
その人の髪をリアルで見た時、俺はそう思った。
「……お前最近俺の髪良く見てるな」
「え、!?」
それを張本人に指摘されて思わず声が上ずって肩までびくり、と跳ね上がる。その様子を見て可笑しげに笑いを堪えつつその人は更にその色気含む声帯を使って話しかけてくる。
「お前の髪のがよっぽど変ってると思うんだが」
「それを言ったらおしまいですよ。そ、それにお……私はそんなに見てたつもりじゃあ……」
黄色い目が愉しそうに輝いているのを見て俺は声を詰まらせるしかなかった。どんな言い訳を並べてもきっと嘘にしか聞こえないだろう。この様子だと。
「もう、原田さんは意地悪ですね……!」
「んなことねえよ? ただ、あまりにも反応が可愛かったから苛めたくはなったな」
ああ、もう!
だからどうしてこういう卑怯な事を言うかな!
頭髪検査でつい最近引っかかったその髪を掬われて俺は身じろぎ。これは地毛。生まれつき……かは解らないけれど水泳やってたりしてたら茶っぽくなって来てしまったその髪を掬ったままくすくすと笑う原田さん。
恥ずかしい。
こんなことされた経験がないから心臓がうずく。
「か、からかわないでくださいって!」
ははっ、わりいわりい。と謝った原田さんは直ぐ後に沖田さんに呼ばれて行ってしまった。どうやら、巡察みたいだ。
やっと落ちついた心臓に安堵のため息を吐く。これは、何なのだろうか。
(心臓が、痛い)
(あの人を思い出すたび)
(苦しくなる)
(この感情は何と言う名前?)
(感情だって知っているのにまだ答えに辿り着けない)