散ってゆく音(アホリズム)
□第二夜
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蝕が終わって保健室に寄ってみると火傷したあの女の子はベッドに座っていた。とっさに入口のドアを音なく閉めてさ、と保健室の入口にたつ。
心の傷は消せない。
けれど、身体の傷を。
せめて、痕が残らないように消してあげたい。
ほかの子も、皆。
どうか、卒業できるように。
(時――!)
音は響き渡る。
そうして、傷を癒していく。
身体の傷だけをゆっくりと。
「――! この、声……!」
「さっきも聞こえた……!」
「うわ、私傷治ってる!」
「なんで、なんで?」
聞こえる声に耳を済ませながらわたしは楽譜を見つめて歌い続ける。
それだけで、良い。
自分だとバレないようにしたいのが本心だ。
でないと伸ばした髪が無駄になってしまう。
――あ、わたし髪青かった。
あーあ。
しょうがない。じゃあ、明日から鬘……ないや。手元には。
す、と歌を止めるとわたしはそのまま辺りを見渡しながら歩き出す。
何事もなかったかのように。
さて、同部屋の子は生きてるかなー?
――なんて、少し好奇心。
部屋に帰ると人はいなかった。
よく見ると荷物もない。
「――死んじゃったかな。」
ぽつん、とつぶやく。
多分今の自分の表情を見たら気味が悪いくらい何かもかも抜けきった顔だろう。
感情を顔にあらわすのは無理だ。
昔からそう。
なんとか子どもらしくとごまかしてはきたけれど。
――何も、理解できないんだ。
わたしは、そんな自分をあざ笑う。
けれど、すぐ後に夕食ということを思い出してそのまま食堂へと向かった。