散ってゆく音(アホリズム)

□第三夜
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生徒総数が105名。

教室につくとそう聞こえてわたしはため息をつく。なるべく、文字について知られたくないから。



――利用されるのはまっぴらゴメンだ。


此処は、使えない文字。と言っておこう。
まだ誤魔化せる。まだ――。



その時。
まばゆい光が学校を包み込んで、わたしは有無を言わずに意識を失ってしまった。










カシャッ。
何かが動く音に薄らと目を開けると森の中。


――隔離型だったみたいだ。



何処に仲間がいるかな、と立ち上がって辺りを見渡すとがさり、という草の音。



「誰ですかー?」



自分でもわざとらしいと思うほどの声を出して問いかけると人が出て来た。



青い眼に優しげな顔つき、金混じりの茶髪……色白の男の子。




「あれー? ええと…?」


「僕は一組の潤目春臣。君は?」


「きぐーだね! わたしも一組なんだ。
 ええと、名前は音無彩楽!」


表面上のよろしく、を伝える。穏やかな笑みを浮かべた彼はそのままよろしく、と返してきた。



「君の文字って何?」


「んーと、わたしの文字。使えないみたいなの」


聞いてきた相手に苦笑を浮かべながら答えつつ髪をゴムで括上げる。髪が鬱陶しくてしょうがないから。



「え、なんで?」


「んとねー、戦うって言われてもなあって思って適当に書いたらそのまま反映されちゃって」



苦笑を被って答えると苦笑いを浮かべた彼は仕方ないよね、と言って歩き出す。適当に歩きながら辺りを見渡して三人目を探しつつ出口も探す。




何処に誰がいるとかわからない。
つい、と適当に視線を這わせていると出口を発見した。



「あ、あれ! あれじゃない? 出口!」


「あ、本当だ…! よかった」


ほ、とした様子の潤目君に笑いかけながら一歩を踏み出した瞬間、がし、と腕を掴まれた。



「――え、」


「なんで、嘘ばっかつくの?」



さっきとは違う、冷えた声に背中がぞくり、と粟立った。



いや、冷えた声じゃない。



何か企んでいる声だ。
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