真っ暗な闇の音(ゴーストハント)

□禁じられた遊び
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保健室に連れて行くと言った安原さんと麻衣を見届けながらひとつ考える。そうして、ひとつ結論をつけると渋谷さんを見据えた。


「私、学校内探検行ってきます」


「遊びじゃないぞ……」


「わかってるくせに。」


私がそう返すとため息をつきながらも踵を返した。行っていい、と言う事らしい。私は踵を返した渋谷さんの額にこつり、と額をくっつける。


「!?!?!!」


滝川さんがあからさまに驚いたような表情をするけれどあえて気にしない。私たちのあいだには浪曼の欠片も何もない。


《……何か分かったら伝える》

《……わかった》


テレパシーで会話を終えると私はそのまま踵を返して歩きすすめる。霊は、いない。けれど――



私を見ている子がいる。



「――私しかいない。出ておいで」


そう告げると幽霊が、ぼんやりとした表情で出て来た。完璧に捕らわれている。いつから自分はこんなに優しくなったのだろうか。


ほだされているのかもしれない。


「どうも、ゴーストハントです。」


その男子生徒は一瞬目を見開いたあと眉を歪めた。後にゆっくりと口を開くと悪態を吐く。


「名前、教えてくれね?」


『……坂内』


自己紹介を聞くと目を細めて一瞬考えたけどそうか、あの生徒かと考えて腕を差し出す。否、腕ではないブレスレットを差し出したのだ。


「この中に入らない? ――このままだとあんた、鬼火の中に取り込まれて成仏どころか完全に存在消えるけど」


『……入る義務を感じられない。』


「……結末を見れなくても?」



むすり、とした坂内がブレスレッドに入ったのはそれからまもなくのことだった。それから校内を探検しつつ壁に手を当てて軽くサイコメトリを行うとやっぱり酷い鬼火の数。喰いあっているようだ。


「――坂内、大変なことをしてくれたな」


ブレスレットが僅かに光った気がする。それからふらり、と間を縫って適当に校舎を練り歩いているとドアを開ける音がしてそっちへと歩み寄る。


「――随分な臭いですね」


安原さんのクラスのようでくるり、と辺りを見渡しながら入ると全員が私に視線をやった。机に手を当てると映像が出て来た。なんだろうか、何だかこれは――


「――降霊術をしませんでしたか?」


私と渋谷さんの声が被る。麻衣と滝川さんが驚いたような表情をする中生徒に視線を遣ると『ヲリキリ様』をしていたらしい。キレる滝川さんの言葉を聞きながらぼんやりと天井を見上げる。


「……死霊の、におい」



死んだメダカの匂いもこんなんだった気がする。幽霊になって出て来たその子達に謝って浄化させたあとはただ白血病の匂いがしただけだったけど。渋谷さんの視線がこっちに向かってきて視線を返す。


《出来るか?》
《臭いは消せるけど私は当分動けなくなる。その後は宿直室においていってくれれば》
《保健室はダメなのか?》
《――鬼火がいる》


「――どうしたの? 刹羅」

「安原さんと麻衣はヲリキリさんの人数を把握して来い。ぼーさんは集計を頼む」


うえー、とまずった顔をした麻衣と滝川さんもしげしげと歩き出す中安原さんは笑顔でそのまま歩き出した。――特殊な人だな。


「――一回この教室を出たほうがいい。」


女子生徒が首を傾げているけれど渋谷さんが廊下に、と手招けばそのままついていった。さて、と私はこの状況にため息をつく。
臭いを消してこの部屋を清めてもあまり効果はないと思える。けれど臭いが酷いのは此処だけらしいから取り敢えずやっといたほうがいいだろう。



「――浄化」



眩い、白くて純粋な光がこの部屋を包んだ。そして、この光が消えた瞬間この教室の臭いは一応消えた。安堵したものの時計の文字が歪んで見える。



「――如月……」


あ、呼び捨てされた。
そう思いつつ私は身体に力が入らずそのまま倒れてしまった。
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