真っ暗な闇の音(ゴーストハント)

□血ぬられた迷宮
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名前を紹介した大橋さんは注意事を告げるけれど南、と呼ばれたその人は大きな声で物事を言って笑っていた。


目の前のオリヴァー・ディヴィスは偽者だというのに。ちらり、と渋谷さんを見ると渋谷さんは知らん顔を決め込んでいたみたいだ。





案内されたベースに入って機械を立てるようすを見るけれど流石に動く気にはならない。人手は足りているようだしソファに座っていると大橋さんがやってきた。依頼内容を聞いてそ、と壁に手を触れようとするけれど壁に触れる以前に映像が流れ込んできた。



血が。
ナイフが―――――



さ、と手を引っ込めるとけほ、と咳をこぼす。血の匂いが私には辛い。話が終わって大橋さんが部屋から出ていくのと同時にミーティングが始まった。


「さっきっから顔色わりいみてえだけど、大丈夫か?」


「――大丈夫。けどな、」


顔色の悪い原さんを一瞥すると原さんは私の顔色を見たのか目を伏せてしまった。多分普段よりすごく顔色が悪いのだろう。


「血の臭いがきつくて私には少し辛い」


それに、と私は首元を摩る。全員の目が一斉に見開かれた。私の首筋からは血が滴っている。軽い傷で良かったと思った。


「――壁に触れる前に視えた。此処の悪霊は血を求めて、手術台に人を縛り付けて首にナイフを下ろして人を殺している。」


全員の顔色がはっきりと変わってそれと同時に渋谷さんが私の腕をきつく掴んだ。

「――ッ、た」


「これから一切壁に触れるな」


「そ、れは無理な相談だな。」


「血の臭いがしたのを感じて嫌なものを見るとは思わなかったのか?」


「――それとこれとは別だ。大体、仕事人間のあんたに其れを言われる筋合いはない。私だって公私混同はしないようにしている」


舌戦を繰り広げる私たちに綾子さんが駆け寄ってきて「傷を見せなさい」と言われた。大人しく首を反らして其れを見せる。
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