感情幸福論

□第7話
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「気にすることねぇやィ。神威のことだからただの挑発でィ」


高杉は今、絶賛落ち込み中だった。
それをいつもドSな総悟が慰めていた。
体育座りで俯く高杉。
そこだけ空気がよどんでいる。
総悟がため息を吐くと同時に
屋上のドアが開いた。
神威が戻ってきたのかと思い、
バッとそちらを見る。


「なにしてんの?まーた授業サボったんですかコノヤロー」

「!…銀八?」


今まで俯いていた高杉が銀八の声に
いち早く反応する。
パアッと顔が綻んでいて、
落ち込んでいた奴には到底見えない。
総悟は呆れたように肩を竦めた。
内心ホッとしている。
ここは二人だけにしておこうと思い、
そっと屋上から出て行った。




「銀八、何しに来たんだ?」

「ひまだから一服しようかと」


ひらひらとタバコの箱を見せながら言う。
ふーんと軽く返事をして高杉は
校庭のほうを見つめた。


「お前も学校にちゃんと来るのは褒めてやるが、授業も出ろよ」

「出てるじゃん」

「俺の授業ばっかじゃねーか」

「銀八の授業以外おもしろくねぇんだもん」

「俺の授業もおもしろくねぇだろ」

「銀八の授業はおもしろい。好きな人が目の前にいるんだもの」


ああ言えばこう言う。
なに、ホストでも目指してんの?君。

銀八も校庭に目を向ける。
正門に同じくらいの背丈の二人が
何かを話しているのが見える。
遠くて誰だかよくわからない。


「誰だ?あの二人」

「んんー?あー、総悟と神威だ」


そう言いながら高杉は校庭に背を向けて
座ってしまった。

あの二人、仲良いんだな。


「…あ、」

「…何?」

「や、なんでもねぇわ」


首を傾げる高杉。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「あー授業だりぃなぁー」

「サボっちゃえばいい」


高杉を一瞥してから銀八はアホか、と呟いて
屋上から出て行った。



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