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□小さなハカリゴト
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昼休み。
授業が早めに終わった祐希と要は、屋上で残りの面子が来るのを待っていた。
ちなみに千鶴は、小テスト最低点数の記録更新で教科担任に呼び出しを食らい、ついでに雑用を言い渡されていたので、手伝いを要求される前に置いてきた。
二人で特に何をしゃべるでもなく、要はいつも通り読書にいそしんでいたのだが、アニメージャから顔を上げた祐希が不意に話しかけてきた。
「ねぇ要。口笛吹ける?」
「はぁ?何だよいきなり。ってかお前、口笛も吹けねぇのかよ。」
祐希の唐突な問いに要も読んでいた本から顔を上げ、いかにもバカにしたような言葉を返した。
その言葉にムッとしたのか、表面上は表情を変えず、祐希も負けじと言い返す。
「そういう要こそ、偉そうにして実は吹けなかったりするんじゃないの?」
「んなわけねぇだろ!何だったら俺様が特別に口笛の吹き方をレクチャーしてやるよ!!」
そう言って自分の口を示して説明を始めようとする。
その様子に祐希も寝そべっていた体制から身を起こし、要に注目した。
そんな祐希の真面目な態度を意外に思いながらも、珍しく己が優位な立場になったことで少々気分が良くなる。
「笛ラムネってあるだろ。あれくらいの穴を唇で作って、長く息を吐き出すみたいにそっと吹きながら音が鳴るように形とかを微調整するんだよ。こんな風に…。」
説明しながらも実際にピーピーと簡単に口笛を吹いてみせる。
(あれ?でも前にこいつ、口笛吹いてなかったか?)
そう要が思い出しているとふいに祐希の顔が近づいてきて…。
――ちゅっ♪
「/////なっ、何しやがる!!」
「だって唇突きだして…誘ってたんでしょ?」
「///誘ってねぇーー!!大体お前が口笛吹けないって言うからわざわざ教えてやってたんだろーが!!」
「俺、口笛吹けないなんて一言もいってないけど?」
「テメッ……!」
要が何か言い返そうとすると屋上の扉が開く音がし、残りの3人が姿を現した。
「ゆっきーに要っち、ひどいよー!手伝ってくれてもいいじゃん!!」
「お二人とも、お待たせしてすみません。」
「…要、顔赤いけどどうかした?」
「〜〜ッ!///別にっ!!」
まさか今あったことをこの3人に言えるはずもなく、要は結局は押し黙ることになった。
その様子に何事か察した悠太は、隣の祐希にこっそり耳打ちする。
「祐希、要に何かしたでしょ。」
「…ちょっとね。」
悠太に含みある返事を返し、要にそっと視線を移す。
(要って単純で、こっちが思った通りの反応してくれるから面白いよね。)
そしてそんな要がとてつもなく愛おしい。
いつから画策していたのか、まんまと要は祐希に唇を奪われたのだった。
fin