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□好きという言葉
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「神子って髪を伸ばす決まりでもあるのか?」


寝起きで乱れた髪を整えていたゼロスに、横からロイドのそんな疑問が投げかけられた。
それに身支度を整える手は止めず、ゼロスは答える。


「別にそんなのは決まっちゃいないけど、何でよ?」

「いや、コレットは女の子だからわかるけど、ゼロスも男にしては髪が長いからさ。」

「それ言うならリーガルだって髪長いでしょーよ。」

「あっ、そっか。じゃあ、じょうりゅーかいきゅーってやつはみんな髪が長いのか。」


自分で言っといて何だが、普段のおちゃらけた態度からゼロスが上流階級であるということになんとなく違和感を感じてしまい、思わずひらがなで発音してしまうロイド。
そのことに気付きつつも、上流階級くらいちゃんと発音しろよ〜、とあえてロイドをからかう言葉を吐きながら、身支度が済んだのかロイドに向き直った。


「んー、おっさんはどうか知らないけど、俺の場合は俺のこのビューリホーな髪が好きだってハニーがいっぱいいるからよ。」


ゼロスは、でひゃひゃっとふざけて笑いながらも、ロイドの次の反応としてゼロスの言動に呆れる姿を想像していた。
しかしロイドから返ってきたのは、予想とは違う言葉だった。


「ふーん、確かに綺麗だしな。俺も好きだぜ、ゼロスの髪。」

「……ヤローに好きって言われてもね〜。」


口ではそう言っても内心では喜んでいる自分がいて、ゼロスは首を傾げる。


(何で今さらこの髪を褒められたくらいで喜んじゃってんのよ?)


今までこの髪を褒める女性はたくさんいたが、そのいずれにもここまで心動かされたことはない。
むしろ表面では笑顔でお礼を言いつつ、内心では冷め切っていた。

それなのに、ロイド本人にとっては何気ないだろう一言に心臓の鼓動を速める自分がいる。
しかも相手は、大好きな女性ではなく正真正銘の男だ。


(裏に何の意図もない、まっすぐな言葉だからかねぇ。)


ゼロスに近づいてくるのは、皆なにか思惑のある者ばかりだった。
そんな人々からどんな賞賛の言葉を贈られようとゼロスの心に響くことはない。


「ちぇっ、何だよ。せっかく褒めてんのに。」

「はいはい、ありがとな。」


まるで子供をあしらうかのように言われたお礼の言葉に拗ねたようにしながら、ロイドは他の仲間のところに戻っていった。
その姿を見て、もう少し素直に喜びを表してみるべきだったかとも思ったが、自分のキャラからいってそれは不自然かと思いすぐさま却下した。

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