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□rainy day
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いつも通り暇つぶしで学校へ来たものの、天気は生憎の雨。
屋上で昼寝というわけにもいかず、仕方がないので教室で机に伏せって寝ていた。
しかし1人で屋上にいる時と違い周りには生徒がたくさんおり、授業開始前の喧噪に包まれてなかなか寝付けない。
そんな中、ひときわ騒がしい声が教室に入ってきた。
「おはよ〜。」
賢吾である。
賢吾は珍しく教室にいる昶を見つけると、嬉しそうに近寄っていった。
「おはよ〜、昶。朝から学校にいるなんて珍しいね。ところで昨日のテレビ見た?」
昶は寝たふりを決め込んで無視していたが、それにも構わず賢吾は話しかけ続ける。
いい加減うっとうしくなった昶は顔を上げて賢吾を怒鳴りつけた。
「うるさい。人が寝てんのに横でごちゃごちゃとウザいんだよ。」
「ヒドッ!どうせまだ寝てなかったくせに…。」
「くちごたえすんな。それ以上騒ぐようなら簀巻きにしてそこの窓から突き落とすぞ。」
「ちぇっ!わかったよ。」
ちょっとくらい構ってくれたっていいのに〜。
ぶつぶつ言いながら賢吾は荷物を置くべく自分の席に向かった。
そんな二人の様子を遠巻きに見ていた生徒が賢吾に話しかけてきた。
「賢吾、二海堂に振られちゃったな。」
「教室入って真っ先に二海堂のとこに行くって、おまえは忠犬かっての。」
「人を犬扱いすんなよな。昶は眠くてちょっと機嫌が悪かっただけなんだよ。」
ぷ〜と頬を膨らませて反論する賢吾にクラスの女子も楽しげに声をかけてくる。
「賢犬(けんけん)〜、可哀想な賢犬にはお菓子あげるからこっちおいで〜。」
「えっ、お菓子くれんの?いるいる〜。ていうか“ケンケン”って何だよ。何か不名誉な響きが含まれてそうな気がする。」
「気のせい、気のせい。ほら、おいで〜。」
「わ〜い。」
聞くともなしに聞こえてくるそんな会話に、昶は何故かイライラしていた。
このままでは眠れそうにもないし、かといって授業を受ける気分でもないため、昶はおもむろに立ち上がるとそのまま始業開始の合図と共に教室を出ていった。
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