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□好きという言葉
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あれからロイドの言動を見ていて気付いた、というか改めて思ったことがある。

ロイドは誰にでも素直に好意を示す。
だから誰かに“好き”と言うのも珍しくない。

実際に今日、リーガルに好きだと言っていた。(正確に言うならリーガルの料理が、だが。)
そういったものを見るたび、ゼロスはなぜか面白くなかった。





そして今現在、当のロイドはというと、見れば何やらジーニアスを拝んでいる。


「ジーニアス頼む!宿題写させてくれ!!」

「え〜?もう、しょうがないなぁ。」

「ありがとう!愛してるぜ、ジーニアス!!」


──ズキンッ


じゃれる2人を見て、今までになく胸が痛んだことにゼロスは首を傾げた。


(何だ?ロイドはただお礼を言っただけだろ?)


以前ロイドからこの髪が好きだと言われて嬉しかったのは、初めて他人から打算のない誉め言葉を贈られたからだ。
しかし、ロイドが誰かに好きと言うたび、ゼロスの中にもやもやとしたものが溜まっていっていた。

誉められて嬉しかったのはわかるが、他の誰かにもその言葉が向けられるのを不満に思うのはなぜだ?
そして今、ジーニアスに愛してると言うロイドを見て、心臓が締め付けられるように苦しいのは?


(おいおい、まさか…。)


しばらく考えて、ゼロスはある一つの答えに行き着いた。


(もしかして俺様、ロイドに恋煩っちゃってんの…?)


言葉にしてみれば、今までのことがストンと納得できた。
髪が好きだといわれて嬉しかったのは、誉められたからではなく、ロイドに“好き”と言われたこと自体が嬉しかったのだ。
そして、誰かに好きだと言うロイドを見ると気分が悪かったのは、その相手に嫉妬していたのだろう。


(初恋が、よりにもよって男かよ…。)


自他共に認める女好きだというのに、これはもはや苦笑するしかない。

しかし、好きになったのがロイドで良かったとも思う。

ロイドは、ゼロスがいくら仮面をかぶろうとも気付いてしまう。
それも無意識に。
そして無償の愛情を与えてくれるのだ。
それはゼロスが幼い頃から欲しくてたまらなかったもの。
それを惜しみなく与えてくれるロイドに恋するのは、必然というものだろう。


(まぁ、好きになっちまったもんはしょうがないよな。覚悟しろよ、ロイド。)

──絶対落としてみせるからな。


ゼロスはロイドを見据え、不適な笑みを浮かべるのだった。



fin
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