小説

□つぼみ
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陽は沈み



暖かかった世界は闇に包まれ

月明りが冷たく照らす一面は
昼とは全く違う表情を見せる






いい歳して一日中花畑で遊び続けた彼らは



そのまま此処で野宿する事になってしまった







一行は焚き火を中心にぐるりと円を描いて寝そべる









一人見張り役の破天荒は
自分とちょうど対称の位置で寝ている少女を見ていた



寝顔を見られる事を恥じらう彼女は
いつもあちら側を向いて寝ている







寝顔



見てみたい





そしたらまたキスしたくなるだろうか



襲ってしまうだろうか







考えてもどうしようも無い事だとわかっていても
脳みそはぐるぐると思考を巡らせる








破天荒は立ち上がると輪を抜けだし

頭を冷やそうと
夜の花畑へと向かって歩き出した

















夜の花畑には匂いが無い



闇の中では色も無く




彼女も

いない…







花なんてものは所詮
光の無い所では価値の無いもので



昼間の花畑を知る者にとっては

心なしか寂しさばかりが募ってくる







彼女に会いたいと

話したいと

触れたいと






頭を冷やすどころか
彼女への想いがただ膨れ上がるだけ







「破天荒さんっ…」


「…!!」







暗闇に響く愛しい彼女の声







「嬢ちゃん…」



「何してるの?」








何故背後から近付く彼女の気配に気付かなかったのだろう





彼女を想う時の自分は
こんなにも無防備になってしまうのだろうか







「ハハ…恐ろしい女だな…」



「ん?」







彼女は首を傾げながら嬉しそうに笑った







「何だか眠れないの」



「…ガキは眠れなくても大人しくベッドに入っとくもんだ…夜は危ないんだよ」



「今更…コドモ扱いしないでよ」







まだ笑っている少女はきっと夜の恐さをまだ知らない





昼間は化けの皮を被った優しいヒツジも



夜には欲望の塊と化したオオカミになる事を








「夜はオオカミがウヨウヨしてんだ…嬢ちゃんみたいな女の子を狙ってな」



「フフ…大丈夫だよ…狩人の破天荒さんがいるから」







笑って腕を絡めてくる彼女の手首を掴み



花畑の中へ押し倒した







「バーカ…俺もオオカミなんだよ」



「…っ」







噛み付くようなキスに
少女の苦しそうな喘ぎが漏れる







「言ったろ…夜は恐いって…」



「っ破天荒さん…」







唇を解放されて
肩で息をする少女は潤んだ瞳でこちらを見上げる





きっとこんなキスを知らないから
上手な呼吸の仕方も知らないんだ







「恐かった?」







冷たく笑って見下ろしても

彼女はふるふると首を横に振る







「破天荒さん…好き…」












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