小説

□課題
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「どうしたヘッポコ丸」







青空のみの視界に

突如長髪のシルエットがこちらを除き込む





地べたで仰向けに寝転がっていたヘッポコ丸は
ゆらゆらと風になびく桃色の髪が少女の姿と重なり
僅かに胸が高鳴った







「…ソフトンさん」







こんな格好で話すのは失礼だと思ったが
何せ身体が動かない







「自分の限界を考えない無鉄砲な修行など…あまり褒められたモノではないな」



「…スミマセン」







それでも

がむしゃらに身体を動かして
今より少しでも強くなる事しか自分にはできなくて

そうすれば今よりも少しは前に進める気がするから







俺は…アナタの妹を守りたいんです







ソフトンはそんな少年と昔の自分の姿を重ね
俄かに微笑んだ







「ヤケクソの修行など身にならん…心の乱れを正すのも立派な修行だ」



「……は…い」







ぼやけて行く視界のせいで彼の表情を伺えないのが酷く惜しい

今までこの人があの少女以外の人間に
こんな優しい微笑みを零した事があっただろうか





そんな思いも空しく

徐々に思考は停止し
ヘッポコ丸は重たい瞼をゆっくり閉じた
















―ねぇ私といてもつまんないの?



…違う―



―へっくん冷たいよ



そんなつもりじゃ―



―私のコト…嫌い?





彼女の頬を伝う一筋の雫






恐れていた



最悪の事態











「へっくん!!」







突然引き戻された現実の世界



視界に映る桃色は
愛しい愛しい少女のものだった







「ビ…ビュティっっ!?」







飛び起きた彼はすぐその場に倒れ込む



頭がグラグラして全身に動くなと警報を出しているようだ







「まだ寝てなきゃダメだよ…!!」







ビュティは慌てて彼を支え
ゆっくりとベッドに寝かせてやる





どうやら意識を手放している間にソフトンが宿まで運んでくれたらしい





横になったヘッポコ丸の目頭をビュティは優しく拭った







「あれ…?」



「コワイ夢でも見たの?へっくん泣いてたよ」









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