小説

□ヘタレ
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景色が白く霞んでしまう程

気怠い陽射しが容赦無く照り続ける中






背中に大きなドクロを背負った白髪の少年は

ふいにいなくなった桃色の少女を探して歩き続ける






―一体何処にいったんだ…






普段から街中でもふらりと一人で旅に出てしまう彼女



いつもの事とはいえ毎度毎度冷やりとさせられる






それだけ自分は彼女への依存度が高いのだろうか






「あ…」







木洩れ日の下でスヤスヤ眠る彼女を見つけた







その無防備な光景は争いごとの絶えないこの世界とは無縁のものに思えて

思わず笑みが零れる









彼女を起こさないように隣りに腰を下ろすと

彼女の方から手を絡めてきた







「ビュティ…?」

「ん…」








甘い吐息を一つ零し

再び規則的な呼吸を始める







半開きの潤った唇から洩れる寝息









―奪ってもいいだろうか







ゆっくりと顔を近付ける





普段はまともに顔を見る事すらできないから





パッチリとした眼を強調させる睫毛が予想以上に長い事や



サラサラと風に揺れる髪の毛から花のような香りがする事



そして改めて彼女の綺麗さに驚かされる








「…」






ゆっくりと
近付けた時と同じ速度で
今度は顔を離す








―自信が…無い






彼女を魅力的に思えば思う程





釣り合わない天秤がどんどん傾いていくようで







その上
こんな寝込みを襲うような真似をしている自分は






何て情けない





せめて彼女の目が覚めるまで



隣りにいていいだろうか










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