小説

□綿飴
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蒸し暑い夏の夜に
目眩を起こしそうな程の人込み





赤や黄色の提灯に
甘ったるい匂いや香ばしい香り





今日は縁日だ








戦闘の日々からかけ離れたこのイベントに
ヘッポコ丸はビュティを誘い出す事に成功した





初めての浴衣に苦戦しながら
人込みを歩くビュティの手をさり気なく引くと
彼女は嬉しそうに微笑み
強く手を握り返してくれた






ああ―

何かデートっぽい






知らずに顔はニヤケてしまい

自分も負けじと彼女の手をしっかり握りしめた








「あっ…」







ふと立ち止まったビュティは一つの屋台に目を奪われる



彼女の目線を追うと
そこには射的屋があり

香水やお菓子
ぬいぐるみなど女の子が好きそうな小物が並んでいる






「何か欲しいのある?」



「え…取ってくれるの?」



「うん、どれがいい?」



「アレ…」








ビュティが指差すのは桃色の小瓶



普段イイとこナシの俺だから
こういうところで少し名誉挽回しておこうと思った



ヘッポコ丸は人影の無い屋台を除き込む






「へいらっしゃい!!」






店の奥から威勢の良い声をあげて出て来たのは
ねじり鉢巻きを巻いたせいでアフロにくびれができたボーボボだった






「よぉビュティ。ついてんな」



「ボーボボっ!!」



「ちょうど掘り出し物を出そうと思ってたところだ」







ガラガラとボーボボが鎖を引くと

上の方から磔にされた首領パッチが降りて来た



額には大当たりの文字







「イヤァァァ!!やめて〜!!狙わないでぇ〜!!」






騒がしい首領パッチを見て

明らかに不快な顔をしているビュティ



しかもビュティの欲しがっていた小瓶は
首領パッチの後ろに隠れてしまった







「も…もういいよ…へっくん」







狙えない位置でもないのだが
ジタバタ動く首領パッチのお陰で
小瓶は非常に狙い難い状態になっている






「だ…大丈夫だよ…」






ヘッポコ丸は喜ぶ彼女の笑顔を思い浮かべ
狙いを済ます







「イヤァァァ〜!!」






桃色の小瓶に照準を合わせ
引き金を引いた








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