文倉庫
□それほどに
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「なぁ、花井。お前はどうすんだよ?」
「は?何を?」
「ったく話聞いてなかったのかよ!進路だよ、進路!この間配られただろ?」
クラスメイトの呆れたようなその言葉でようやく思い出した、進路希望用紙の存在。
今週末が提出期限のその紙には、まだ何も書いていない。
いや、正確には書けないんだ。
「まだわかんねぇよ、そんなの」
大学に行って、よくわかんねぇけどどこかの企業に就職して………
そんな、中学の頃ぼんやりと描いていたはずの“将来”の姿でさえ、霞んで見えない。
それよりも、ここのグラウンドで土に汚れて野球をしている姿の方が生々しく瞼の裏に浮かぶ。
「そんな先のこと、まだわかんねぇ」
「そうかあ?だってさ、もうすぐだぜ」
やめてくれ。
聞きたくない。
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