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□知ってしまった
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「はぁっ…はぁっ……」
暗い、暗い夜。
緑川リュウジは、一人で特訓に励んでいた。
みんなに迷惑はかけられない。
それに、自分のせいで負けるのはイヤだ。
だから、一人で特訓をしていた。
しかし、彼も日本代表とはいえ中学生。体力なんざ高がしれているわけで、今はもう疲れ果てていた。


そんな彼を、見ている人影があった。
赤い髪に透き通るような肌を持つ少年…基山ヒロトだ。
彼は、同性でも緑川が大好きだった。過去形ではなく、現在進行形で。
そして、緑川もそれを分かっているし、受け入れている。
彼は、緑川が黙って毎晩特訓しているのを分かっている。
緑川も彼に隠せないと分かるので、話しているのもある。
それを聞いたヒロトが黙っているわけがない。
緑川が満身創痍なのを見ていられないので、こっそり手助けしていた。ベンチに飲み物やタオルを置いておくのだ。
緑川は、気づいているのか?
彼はいつも不安だった。
もし嫌がっていたら?
いらなかったなら?
でも、ついやってしまう。
緑川が大好きだから。

現在、夜12時。
ヒロトはいつもこの時間に、タオルなどを回収していた。
そうすると、何かが置いてあるのに気がついた。
「ん…あれは?」
それは小さなメモ用紙だった。
それにはこう書かれていた。

『いつもありがとうね。』と。
人知れずヒロトは、暖かい気持ちになっていた。

翌日の起床時間30分前。
緑川は、ヒロトの部屋に来ていた。
「俺、緑川だけど…入ってもいいかな?」
「勿論」
というやりとりはあったが。
今は二人で、ベッドに腰掛けていた。
「ねぇ、ヒロト。」
「何だい?」
「いや、なんでもないんだけど………」
「………」
「………」
沈黙。
「言いたいことがあったら、何でも言っていいんだよ?」
ヒロトの言葉。
「…俺さ、毎晩特訓してるだろ?」
「うん。」
「でさ、毎日、タオルと飲み物があるんだよ。」
「…へぇ。」
「誰かな、やってくれてるの」
ヒロトは、少し悲しかったけれど、ここでアピールしても何らメリットはない。
だから…
「きっと、見ていてくれてるんだよ。緑川のことをさ。俺と同じくらい緑川を思ってる誰かが。」
と言った。
「ヒロトじゃ、ないの?」
緑川はそう言った。
緑川も、実は彼に期待していたのだ。
彼らは確かに愛し合っているが、世間からすれば許されないもので、キリスト様からすれば一瞬で地獄行きだ。
だから、『好き』は表面化していない。そのため、緑川はやっぱり不安だったのだ。
本当に自分を愛してくれているのか、と。
そして、ヒロトはこう言った。
「もし、俺だったら嬉しい?」
と。
ヒロトは緑川の気持ちに薄々感づいていた。
「泣けるほどね。」
緑川はそう言った。
ここでヒロトは賭にでた。
「じゃあ、泣いてくれる?」
「え…?」
「もし俺だっていったら、泣いてくれる?」
「…うん。本当なら。」
一つ、間。
ヒロトはうつむき気味に、暴露する事に決めた。
「俺なんだ、本当に。黙っててごめん。でも、あんな緑川見たら居てもたってもいられなかった。」
沈黙。
そして
「…っ、ありがとう…っ。」
顔を上げるとそこには、一筋の涙を拭う緑川が。
「ごめんねヒロト。……大好きだよ。ありがとう。」
「うん。知ってるよ。大好きなのは俺だって。」
「でもヒロトこそ無理しちゃだめ。確かにうれしいけど…でも、早寝早起きは大事だし。」
「わかったよ。」
そして

愛してる

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